2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J04435
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤井 あゆみ 大阪大学, COデザインセンター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 精神分析 / メラニー・クライン / カール・アーブラハム / シャーンドル・ラドー / ジークムント・フロイト / メランコリー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、研究課題「ベルリン精神分析インスティテュートの発展と衰退」を遂行するため、カール・アーブラハム精神分析インスティテュート(ベルリン精神分析インスティテュート)にて、以前入手した当インスティテュートの記念式典の録音記録のテープ起こしを行った。この記念式典は、「ベルリン精神分析インスティテュート(以下、BPIと略記)」から「カール・アーブラハム精神分析インスティテュート」への名称変更式であり、この新たなインスティテュートの門出を祝う式典であった(BPIは1920年に創設され、名称変更は1970年に行われた)。 この式典の講演者の中には、BPIの創設者であり、新インスティテュートにその名を冠されたカール・アーブラハムの愛娘ヒルダもいた。彼女自身も亡き父同様、精神分析家であったため、講演では、精神分析的見地から、精神分析の創始者フロイトとその高弟アーブラハムとの関係(父子関係)、およびもう一人の高弟であり、後に離反したユングとの関係(同胞関係)が赤裸々に語られた。この語りは、精神分析運動史において貴重な資料であることは間違いない。また、他の講演者たちの話も興味深いものばかりであった。BPIでどのような臨床と訓練が行われ、どれだけの人数が治療を受けていたか等々の詳細も述べられたこれらの講演は、インスティテュートの歴史資料として価値のあるものである。 これらの資料を基に論文を執筆する予定であったが、年度末に課程博士論文の提出の締め切りがあったため、研究課題に関しては収集した文献および資料の整理に留まり、その内容を発表するまでに至らなかった。しかしながら、研究課題にも一部関係する博士論文「メランコリーのゆくえ――フロイトの欲動論からクラインの対象関係論へ――」は完成させることができ、平成29年3月に京都大学大学院人間・環境学研究科に提出する運びとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度はベルリンで資料収集を行う予定であったが、博士論文の提出を年度末に控えていたため、海外調査に赴くことができなかった。しかしながら博士論文と研究課題は重なる部分もあるため、研究の内容自体は深めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題の達成のため、カール・アーブラハム精神分析インスティテュート(ベルリン精神分析インスティテュート(BPI))において資料を収集し、インスティテュートが繁栄を極めた1920年代から衰退へと向かっていった1960年代までの記録を思想史的に編纂する。この成果を今秋、日本精神医学史学会で発表し、学会誌にも投稿予定である。 また、今年7月には、研究課題に関連するBPIで活躍したメラニー・クラインについての学会発表を日本精神分析的心理療法フォーラムで行う予定である。すでにその発表の抄録は事務局に提出済みであり、査読の結果が待たれている。さらに8月には、BPIの創始者であるカール・アーブラハムの芸術論に関する考察を日本病跡学会の学会誌に投稿予定である。これらの論考をまとめ、書籍として発表することを目指している。
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