2016 Fiscal Year Annual Research Report
家計における子どもへの金銭的・時間的教育投資の決定とその影響
Project/Area Number |
15J04453
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
関島 梢恵 大阪大学, 国際公共政策研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 家計行動 / 消費配分 / 時間配分 / パネルデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、初年度から行っている①「家計内の消費配分の決定」についての研究を継続しながら、②消費を含めた家計の経済厚生について近年の統計を整理し、③「通勤時間が夫婦の時間配分に与える影響」についての共同研究を行った。 いずれもデータは家計経済研究所の『消費生活に関するパネル調査』を使用している。親から子どもへの投資行動を考える際に重要な要素となる財と時間について、家計内における分配決定プロセスを明らかにすることを目的としている。同一個人の追跡パネルデータを用いることで、観察されない個人や世帯の要素がもたらす内生性の問題を考慮し、個々人ごとの回答の傾向で生じる測定誤差の問題に対処した点が特徴である。 財に関しては①の研究結果から、夫婦間のバーゲニングパワー(交渉力)がその配分に影響を及ぼすこと、妻のバーゲニングパワーが高まると夫と比べて子ども向けの消費配分が増える一方で、妻と子どもの配分に対する影響は無差別であることが明らかになっている。 時間に関して現在進行中の③の研究では、夫婦の通勤時間が夫婦の市場労働時間と家事育児時間の配分に及ぼす影響を分析している。通勤時間は市場労働を行う上で生じるコストであり、日本では長時間通勤の弊害も問題となっている。分析結果は、通勤時間の増加は配偶者の市場労働を抑制させる効果があることを示している。本人の通勤時間が長くなれば、夫と妻ともに、自分の市場労働時間を増やし、家事労働時間を減らす。一方で、配偶者の通勤時間が長くなれば、夫と妻ともに、自分の市場労働時間を減らしている。ただし、妻の家事時間は非弾力的であり、夫の家事時間は弾力的であることもわかった。 ②の分析から、夫婦の就業形態によって家計の経済厚生や格差の変化に違いが見られることとも合わせて、今後の研究を進展させる上で重要な示唆を得られたと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ得られた研究成果は、いずれも論文にまとめる段階、あるいは投稿中となっている。進行中のものを遂行し、当初の計画通り、次の研究へと進む予定である。具体的な状況は以下の通りである。 ①家計内の消費配分決定に関する研究は、研究成果を国内と海外の学会で発表してコメントをいただき、学術誌に投稿すべく準備中である。 ②消費を含めた家計の経済厚生に関する2000年代の統計データを整理してまとめた共著論文は、学術誌への掲載が決まっている。 ③夫婦間の時間配分決定に関する共同研究は、国内のコンファレンスにて報告をし、今後修正を行って学術誌へ投稿する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度までに行ってきた研究を学術誌にて発表するとともに、次の研究へと進んでいく。これまでの研究では、家計内での消費や時間の配分決定のメカニズムに焦点を当てて研究を行ってきたが、ここからさらに子どもへの影響という点に着目した研究を行う。 既に今年度から始めた共同プロジェクトにて、大阪府下の4歳~10歳の子どもをもつ母親を対象にインターネット上でアンケート調査を実施してデータを集めている。親から子への財や時間の投資の結果、子どものoutcomeにどのような影響が生じるのかについて、「子どもの健康」の観点から分析を行うべく、母親の労働状態や家庭での育児状況と子どもの健康状態に関する質問を行った。今後はこのデータを使って分析を試みるとともに、同プロジェクトメンバーとともに厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査」の個票申請を行い、より詳細な研究を行っていく。
|
Research Products
(4 results)