2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J04606
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
名和 愛利香 同志社大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | vesicle / pH gradient / glucose oxidation / transformation / reversible motion |
Outline of Annual Research Achievements |
採用第1年度目は、まず半透膜の乾燥によるベシクルへの影響や、細かな対流の影響を排除するためにベシクル溶液を半透膜と壁で覆うような実験装置を設計し、これを外部注文して理想的な装置を作製した。この装置を用いて単純な操作によって定常的にpH勾配を作製し、定常pH勾配下におけるベシクルの観察をおこなった。 次に、オレイン酸系ベシクルのpH勾配下における可逆的な擬足の伸縮運動を観察し、その運動メカニズムを解明した。ベシクルから生じる擬足の伸縮運動については数理モデルを用いて詳しく検討し、この運動はベシクル内外の浸透圧差の大きさと膜弾性エネルギー大きさのバランスが変動することによって生じるという結論を得た。これらの成果を論文および学会で報告した。また、マニピュレータを用いた局所的なpH勾配下におけるオレイン酸系ベシクルの運動を観察し、ベシクルの運動とpH勾配の大きさや絶対値に対する依存性を定性的に検討した。 最後に、グルコースの酸化反応を利用したオレイン酸系ベシクルの可逆的変形運動を観察し、そのメカニズムを考察した。グルコースを酸化する酵素を用いると、オレイン酸系ベシクルの周囲のpHを局所的に下げることが可能となり、ベシクルが可逆的変形運動を生じることを論文および学会で報告した。これはpH変化が生じるような化学反応を用いれば様々な反応系においてオレイン酸系ベシクルから自律運動を取り出すことができることを示唆していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
採用第1年度目の交付申請書の研究実施計画には、①定常濃度勾配を形成できる装置の作製とこの装置を用いた持続時間がほとんど永続的であるベシクル運動の観察、②マニピュレータを用いたベシクルの擬足の伸縮運動のメカニズムの解明の2点を記載した。 これを採用第1年度目の研究実績の概要と比較すると、①については6割程度の進展具合であるが、②については完了している。 加えて採用第2年度目に実施する予定であったグルコースの酸化反応を利用したオレイン酸系ベシクルの運動について、運動の観察や考察、さらにそこで得られた結果の報告(論文や学会)が完了している。 したがって、全体を通してみれば、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
採用第2年度目は様々に作製した定常的なpH勾配下におけるオレイン酸系ベシクルの運動の傾向を観察し、pH勾配の大きさや絶対値に対する依存性を定量的に検討する。 さらに、ベシクルと振動反応(pH振動反応など)を組み合わせたときのベシクルの挙動について実験・考察する。 これらの2点についてそれぞれ論文にまとめる。
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Research Products
(7 results)