2016 Fiscal Year Annual Research Report
活性酸素種により誘導されるエピゲノム変化を通じた多段階発癌機序の解明
Project/Area Number |
15J04640
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西中 瑶子 京都大学, iPS細胞研究所, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 一過性骨髄増殖症 / 多段階発癌 / 血球分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
血球分化において重要な活性酸素種の種類を同定し、 ダウン症候群に合併する前白血病病態(TAM)及び、そこから発展する真の白血病の多段階発癌機序の解明を、 1) trisomy 21によるゲノム不安定性、 2) GATA1変異の影響及び、3) エピゲノムの変化という視点から検討することを目標に研究を行っている。 具体的には、Informed conseneを得た、TAMを合併していないダウン症候群患者及び、TAMを発症したダウン症候群患者由来のiPS細胞を樹立し、ゲノム編集技術を用いてGATA1遺伝子変異を導入、あるいは修復し、isogenicなiPS細胞を作製し、実験を行う。 まずは作製したTAM患者由来iPS細胞を血球分化させる過程において、GATA1遺伝子変異の影響及び、エピゲノムの変化を解析し、得られた差から病態を形成する起点となる血液前駆体の分画を探索する。 次に、どの種の活性酸素種が、どの段階で分化に影響を及ぼしているかを同定することで、血球分化における活性酸素種の役割を解明する。さらに同定した活性酸素種を調節することにより、TAMでない患者由来のiPS細胞からの血球分化過程でGATA1変異やエピゲノム変化が誘導されるかどうか検討を行う。 最後に、 in vivo の系において、GATA1変異を獲得した血液前駆細胞を移植し、活性酸素種を調節することで、病態再現 ・発症機序の解明を試みる。 本研究により、小児白血病発症のメカニズムの一端が明らかとなり、生体モデルを含めた新たな疾患解析モデルが確立されれば、将来これらを用いたさらなる解析や、治療へと結びつく研究・新薬の開発へと繋がり、真の白血病克服への可能性が開かれる。また、活性酸素種の血球分化や多段階発癌機構への関与が明らかになることで、白血病だけでなく他臓器に置ける癌の制御へと繋がる糸口になると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度までに、TAM患者及びTAMを発症していないダウン症患者由来の体細胞からiPS細胞を樹立し、ゲノム編集によってGATA1変異導入あるいは変異修復を行い、染色体コピー数及びGATA1変異以外の遺伝子背景が揃ったisogenicな以下の4種類のクローン[(1) 21番トリソミー(GATA1変異なし)、(2) 21番トリソミー+GATA1変異あり、(3) 21番ダイソミー(GATA1変異なし)、(4) 21番ダイソミー+GATA1変異あり]を得た。これらの細胞のうち2D血球分化系によりin vitroで分化させたところ、TAM芽球由来iPS細胞(21番トリソミー+GATA1変異あり)はそのGATA1修復iPS細胞及びTAM-T細胞(芽球ではない)由来iPS細胞(21番トリソミー(GATA1変異なし))と比較して、in vitroで赤芽球系への分化阻害、巨核球系での成熟阻害、及び骨髄球系への分化促進を呈することが明らかになった。この結果は、未熟な細胞が異常増殖することに定義づけられるTAMの病態を再現していると考えられた。平成28年度は、より詳細な血球分化の段階的な検討により、血球前駆細胞のコミットメントが障害される細胞が由来する分化ステージの同定に着手した。候補となる分画をこれまでの解析から推測、単離し、形態・継続培養・コロニー系性能、及び遺伝子発現のプロファイルを探索している。これまでに2つの候補の分画を解析したが、単離した時点ですでに、TAM芽球由来iPS細胞及びTAM正常細胞由来iPS細胞それぞれの分化系統の運命決定が確定していることがわかった。現在は、より早期の分化段階に着目した検討を進めているところである。さらに、iPS細胞から血球前駆細胞の分化段階に沿って3ポイントを抽出し、メチル化解析・活性酸素種の検出を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで行った実験結果を踏まえて、平成29年度は現在行っているメチル化解析の結果からGATA1変異の有無や21番トリソミーのコピー数の差に着目した差を抽出し、必要に応じてChIP-seq、トランスクリプトーム解析を行い、細胞生物学的表現型をもたらすエピゲノム・トランスクリプトームの変容を明らかにする予定である。また、活性酸素種を血球分化の段階ごとの検出を試み、細胞死、細胞周期、分化能、増殖能等を解析した結果を合わせて、分化障害の原因を細胞生物学レベルで明らかにする。さらに、樹立した疾患特異的iPS細胞をNOGマウスに移植し、特定された分化障害を引き起こす原因を調節することで、表現型の回復を目指す。 また、これまでに行ったin vitroにて血球分化を行った結果得られた表現型は、TAMを合併していないダウン症由来iPS細胞(21番トリソミー)にGATA1変異を導入したクローンで再現されただけでなく、正常細胞由来iPS細胞(21番ダイソミー)にGATA1変異を導入したクローンでも同様の結果が得られた。in vitroにおける血球分化の表現型には21番トリソミーに起因する差は認められなかったことから、この表現型はGATA1変異単独で引き起こされるものと推測された。そこで、21番トリソミーは血球分化の過程で、GATA1変異の獲得、あるいは、GATA1変異獲得クローンの生存に有利に働く仮説を立て、TAMの発症に関わるメカニズムの解明に取り組んでいる。具体的には、分化の系統特異的且つ、21番トリソミー特異的にDNAダメージの増加が起こっているか、DNA修復機構の活性化が起こっているかについて検討を行う予定である。
|
Research Products
(3 results)
-
[Presentation] -VEGFA- a new therapeutic target in CNS leukemia2016
Author(s)
Kato I, Nishinaka-Arai Y, Nakamura M, Akarca AU, Niwa A, Ozawa H, Yoshida K, Mori M, Wang D, Ueno H, Shiozawa Y, Shiraishi Y, Miyano S, Gupta R, Umeda K, Watanabe K, Koh K, Adachi S, Heike T, Saito MK, Sanada M, Ogawa S, Marafioti T, Watanabe A, Nakahata T, Enver T
Organizer
American Society of Hematology 58th annual meeting
Place of Presentation
San Diego
Year and Date
2016-12-05
Int'l Joint Research
-
-