2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J04747
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田村 翔平 東北大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 表彰制度 / 公理的特徴付け / 公平無私の原則 / 匿名性 / 対称性 / 単調性 / 最小性 / 次点者付き多数決 |
Outline of Annual Research Achievements |
相互評価を基礎とした表彰制度の理論的分析において、いくつかの進展が得られた。
一つ目に、表彰制度の公平性と整合性を表す公理として、匿名性(Anonymity)、対称性(Symmetry)、単調性(Monotonicity)という公理を発案し、適切に定式化することが出来た。匿名性は、投票者の間に投票力の格差が生じないことを保証するための公理であり、具体的には、いかなる二人の投票者の間で意見の交換が行われたとしても、それが結果に影響を与えないことを要求する。対称性は、全ての候補者が同等に扱われることを保証するための公理であり、具体的には、受賞者の決定が候補者の添え字に依存しないことを要求する。単調性は、受賞者の決定が候補者の獲得票数に関して単調となることを要求する公理であり、具体的には、ある時点で受賞者として選ばれている一人もしくは複数の候補者に対し、新たな票がそれぞれ一票づつ追加された場合、その候補者は新しい時点の下でも受賞者として選ばれることを要求する。
二つ目に、次点者付き多数決(Plurality with runners-up)という、分野において既に提案されている表彰制度が、上述の公理を全て満たし、さらにそれらの公理と分野における最重要公理である公平無私の原則(Impartiality)を満たす表彰制度の中で唯一“最小”な制度であることを示すことが出来た。ここで表彰制度が最小であるとは、(包含関係の意味で)より小さい受賞者の集合を常に選ぶことが出来るような別の表彰制度が存在しないことをいい、賞の権威を保持するという実用的な観点からも満たすことが望ましい性質である。上述の結果により、これらの公理を考慮の対象とする場合、次点者付き多数決を表彰制度として用いることが最も適切であるということが分かる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
表彰制度の公平性や整合性を表す公理を発案し、適切に定式化するという本年度の計画が達成されている。さらに、定式化した公理を用いて既存の制度の公理的特徴付けを行うという、当初の計画以上の進展が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、以下の二つが挙げられる。
一つは、上述の結果により望ましい表彰制度の候補となった次点者付き多数決のさらなる公理的特徴付けを行うことである。具体的には、上述の公理系とは異なる公理系を用いて次点者付き多数決を特徴付けることが可能かどうかについて検証する。これにより、次点者付き多数決という表彰制度を様々な角度から理解し、その特徴を把握することが可能となる。特徴付けに際しては、分野において同じく重要な公理である正の全会一致性(Positive unanimity)や負の全会一致性(Negative unanimity)などの公理を適切に使用することが可能であるかどうかについても検討する。
二つは、ノーベル賞などの選考で観察されるように、受賞者の人数に上限が存在するモデルを考え、その状況において望ましい表彰制度の設計可能性を分析することである。上述の次点者付き多数決は、対称性を意識したデザインとなっていることからも理解されるように、受賞者数に上限が存在する場合はその上限数がいかなる値であっても実行可能な制度とならない。そこで、まずいかなる上限値に対しても実行可能となり、かつ分野におけるいくつかの重要公理(公平無私の原則、正の全会一致性、負の全会一致性など)を満たすような表彰制度が設計可能であるかどうかを分析し、また可能である場合は、全体としてどのような制度が存在し得るかということを明らかにすることを目標とする。
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