2016 Fiscal Year Annual Research Report
高性能SiC MOSFETの実現に向けた界面物性及びキャリア散乱機構の基礎研究
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15J04823
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 拓真 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 炭化珪素 / MOS構造 / MOSFET / サブスレッショルド特性 / 界面準位密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年我々のグループでは高濃度ボディ層を有する4H-SiC MOSFETの低温サブスレッショルド特性から伝導帯極近傍 (E_C>E_T>E_C-0.01 eV) の界面準位密度 (D_it) を定量し、D_itがAlの高濃度ドープで増大することを見出した 。 本年度はp型SiC MOS界面におけるD_it増加の起源についてより詳細に検討を行い、D_it増加を説明する物理モデルを構築した。高濃度p型ボディ層を有するMOSFETは、オン状態における界面近傍のSiC表面電界が大きいために、より強く量子閉じ込めの効果を受ける。そのため、上記E_C (2次元状態密度の下端のエネルギーに対応) のエネルギーレベルはより高エネルギー側にシフトする。一方で、SiC MOS界面の界面準位密度は伝導帯側に向かって指数関数的に増加する。よって、高濃度p型MOS界面の場合、よりD_itが高密度に存在するエネルギー範囲をモニタリングしているために、D_itが増加する。 先行研究ではMOS界面準位評価の対象となるエネルギー範囲は主に禁制帯の中に限定されてきた。しかし本研究から、SiC MOS界面においては、D_itをモニタリングするエネルギー領域が伝導帯の中まで上昇してもなお、高密度のD_itが存在することが明らかとなった。つまり、SiC MOS界面では、伝導帯の中にも高密度の界面準位が存在しているために、MOSFETのON状態において表面フェルミ準位が伝導帯の中に位置しているような状況でも、ゲート電圧を増加させるに伴って、より多くの界面準位にキャリアが捕獲される。本研究により、キャリア捕獲の影響は強反転領域の移動度にも影響を及ぼす可能性が高いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、高濃度p型MOS界面においてD_itが増加することの起源について考察し、高濃度p型MOS界面では量子閉じ込めの影響が強まることでD_itが高密度のエネルギー領域をモニタリングしていることを明らかにした。本研究は、従来は注目されてこなかった「伝導帯の中」に位置する界面準位の重要性を明確に示唆する結果であり、学術的に意義深いといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
Si の場合、主要な界面欠陥は、未結合手であることが明らかとなっており、水素で未結合手を終端することで界面欠陥の低減が可能である。よってSiC の場合にも界面欠陥の起源を同定すれば、それに基づいた低減法を提案できると考えられる。その際、界面欠陥低減前後の、電子物性および化学構造の系統的な評価が重要となる。本年度は、界面欠陥の起源同定に取り組み、得られた知見に基づいて、世界的に標準となるような「SiC/SiO_2の界面欠陥の低減法の確立」を目指す。
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