2015 Fiscal Year Annual Research Report
ハプスブルク君主国時代トリエステにおける言語とネーション
Project/Area Number |
15J04850
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
根本 峻瑠 神戸大学, 人文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | ハプスブルク君主国 / トリエステ / スロヴェニア / 多言語社会 / ナショナリズム / ギムナジウム / 言語帝国主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアウスグライヒ体制下ハプスブルク君主国統治時代におけるトリエステの多言語状況とネーション間の相互関係の解明を目的としている。27年度はまず1880年から10年毎に実施された国勢調査の一部である日常語調査に際したネーション間の対立に注目して研究を進めた。トリエステで発行されていた新聞史料の分析からは、言語を巡ってイタリア系とスロヴェニア系がそれぞれナショナルな言論を主張していたことが確認された。その一方で、当時トリエステに設置されていた国立ギムナジウムK.K. Staats-Gymnasium in Triestに着目し、史料の揃った20世紀初頭を中心に、同校が発行していた「年報」と、生徒の母語・父親の職業・出身地などが記された「生徒記録簿」の分析、そしてトリエステ市内と現スロヴェニア共和国にあたる地域に置かれていた他のギムナジウムとの比較を行った。その結果国立ギムナジウムはイタリア系とスロヴェニア系住民の言語的対立やハプスブルク君主国内におけるドイツ語の言語帝国主義的側面を強調する視点だけでは捉え切れないトリエステの言語状況を示す、極めて興味深い多言語空間であったことが明らかとなった。 史料調査は8月31日から10月1日までトリエステ、ウィーン、リュブリャーナ、ザグレブの文書館、図書館、統計局で行い、新聞、学校関係史料、統計資料を多数入手することができた。 研究報告は東欧史研究会・ハプスブルク史研究会(2015年10月)、多言語化現象研究会(2015年12月)、海港都市国際シンポジウム(2016年2月)で行った。本年度の研究結果は論文「20世紀初頭トリエステにおける言語的多元性と国立ギムナジウム」としてまとめた(『神戸大学史学年報』第31号、投稿中)
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外史料調査では多数の関連史料を入手するとともに、日本では入手困難なイタリア語、スロヴェニア語、クロアチア語の研究文献も入手することができ、今後の研究の可能性が大いに広がった。三度に渡る学会報告では史学のみならず言語学、社会学、文学と他分野の研究者たちから有益な知見を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究内容を博士論文として完成させることを目指す。日常語調査を軸としながら、トリエステの国立ギムナジウムにおける言語状況を更に考察する。史料調査は引き続いて行う。また多言語社会研究は言語学や社会学とも大いに関連する問題であるため、次年度も今年度同様に史学以外の研究会でも研究発表を行う。
|
Research Products
(3 results)