2015 Fiscal Year Annual Research Report
観測および数値シミュレーションから探る銀河形成・進化と暗黒物質の関連
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15J04974
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小林 将人 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 銀河形成進化 / 星間現象 / 巨大分子雲 / 質量関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
銀河内部での主要な現象である星形成活動は銀河の性質を著しく変化させる要因であるため,銀河形成・進化と暗黒物質の関係解明において重要な現象の一つである.しかし星形成活動は種々の物理素過程を含み極めて複雑であるため,宇宙論的な大規模な統計量を扱う際に簡単な仮定に基づいたモデル化が不可避となっている.そこで今年度は,星形成活動の前段階となるガスの生成・破壊について基礎過程に基づいた定式化を集中的に行なうことで,実際に銀河内部で起こる物理現象と観測量との対応関係を明らかにすることに取り組んだ. ガスの中でも星形成の母体となるのは巨大分子雲と呼ばれる天体で,100太陽質量以上も質量を持つ巨大なガスの塊である.近年の大規模な電波観測から,地球が存在している天の川銀河,およびその近傍に存在する銀河において,巨大分子雲が大量に同定され始めている.これにより巨大分子雲の質量分布(質量関数と呼ばれる)が銀河の領域ごとに明らかにされ始めている.また近年の3次元の高解像数値シミュレーションにより,分子雲の生成は多数回の衝撃波圧縮に駆動されるという示唆が得られている. 本研究では,多数回の衝撃波圧縮によって分子雲が形成・成長するという描像を銀河スケールに適用し,銀河スケールにおける巨大分子雲質量関数の時間発展方程式を定式化した.本研究の意義・特徴は,星形成活動の主な段階として近年注目を集めている巨大分子雲同士の衝突現象も含めたことにより先行研究をより精密に再定式化した点であり,また星形成によって破壊された分子ガスが次世代分子雲形成に寄与する効果も導入したという点にある.この定式化から数値計算を実行し,観測されている巨大分子雲質量関数の銀河領域ごとの差異を再現することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外研究機関におけるセミナー2回と学会発表10回を行い,国内外問わず積極的に発表した.こうした発表の機会を通して海外も含む他研究機関の研究者と活発に議論を交わしたことにより,本課題で考慮されていなかった現象(例えば大質量巨大分子雲の生成が抑制されてしまう効果や小質量分子雲を生成する機構)が必要であることを理解し,本研究でのモデル化に反映させることができた.さらに研究成果・発表が評価され,口頭発表とポスター発表で各1回表彰を受けた.また次年度の早い段階で論文1本,要旨集1冊に研究成果が出版・掲載予定となっている. さらに多数回の高精度な計算を必要としたため,数値計算手法の知識および技術の向上があり,これは今後の研究にも広く活かすことができる.
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Strategy for Future Research Activity |
本課題でこれまで取り扱った銀河円盤部にとどまらず,巨大分子雲衝突現象が重要になると考えられる銀河中心部における質量関数の統御機構を,これまでのモデルを衝突現象に特化して発展させることで明らかにする.これにより,銀河の中心から外縁部にいたるまでの星形成前段階の描像を確立する. 一方で巨大分子雲の自己破壊については,破壊機構のモデル化に不定性がある.そこで大質量星形成領域の観測事実と照らし合わせることで適切なモデル化を検討する.また,星からの輻射によって破壊されたガスの星間空間での振る舞いを理解するために,本課題で取り組む予定であった数値シミュレーションを本格的に開始する.
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Research Products
(10 results)