2015 Fiscal Year Annual Research Report
ネットワークトポロジーデザインによる炭素ナノ物質の物性制御
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15J05066
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
丸山 実那 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ナノカーボン物質 / フラーレン / グラフェン / 電子構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度では、小さいフラーレンを構成単位とした種々の二次元原子層ネットワーク物質の物質設計と物性解明、および、六方晶窒化ホウ素に空いた空孔に埋め込まれたグラフェンフレークのスピン相互作用の解明を密度汎関数理論に基づく第一原理計算手法を用いて行った。小さいフラーレンとして、対称性の高いC32、C36フラーレンに着目し、これらの対称性を活かした新奇の二次元炭素ネットワーク物質の物質設計を行った。C32フラーレン分子間が共有結合で繋がった二次元C32ネットワークは直接バンドギャップを有する半導体であることを明らかにした。さらにC32ネットワークの空孔にC36や(6,0)カーボンナノチューブを分子ドープすることで、金属に変調することを示した。二次元C36ネットワークは、側面の六つの六員環を互いに共有するネットワークであり、三つの準安定構造を有することを明らかにした。ネットワーク構造に依存して、半導体から金属に変調する。さらに、C36ネットワークは電場印加、あるいはホールドーピングすることでフェルミレベル近傍の分散の小さいバンドがスプリットし、スポン分極が生じることを明らかにした。六方晶窒化ホウ素に埋め込まれたグラフェンフレークは非結合性π電子によってフレーク全体にS=1/2のラジカルスピンが生じ、二つのフレーク間で平行、あるいは半平行なスピンのカップリングを有することを明らかにした。二つのフレークのスピン相互作用は短距離相互作用であり、BC界面とNC界面で波動関数の分布はそれぞれ結合性、反結合性の分布を有することを予言した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度では、構成単位となる分子の幾何学構造の解析と安定性の探索を行うのと同時に、小さいフラーレンや多環炭化水素分子からなる固体相のトポロジーデザインを行った。構成単位としては小さいフラーレン(C32、C36、C40)や多環炭化水素分子(フェナレニル分子、フェニル分子、アセペンタレン分子)の幾何学構造の解析、安定性を探索した。続いて、これらの分子の中で、C32、C36を構成単位としたネットワーク構造や六方晶窒化ホウ素とフェナレニルからなる複合構造体のトポロジーデザインを行い、量子論に立脚した電子物性計算手法を用いてネットワーク構造の幾何学構造の解析と安定性を探索した。高次構造体の幾何学構造の解析と安定性の解明に加えて、ネットワーク構造の構造異性体の探索と構造相転移の可能性、熱擾乱に対する系の安定性の検証を並行して行ったため、予定である全ての小さいフラーレン、多感炭化水素分子の幾何学構造の解析と安定の探索については遅れが出ている。これらの結果を、国内外の会議で発表を行い、そこで得られた議論をフィードバックし、研究についての理解を深めた。同時に情報収集を行い新規の研究へのアイデアに活かした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、ナノ炭素高次構造のネットワークトポロジーと電子物性の相関を明らかにすることである。多角形環の配置の観点から、ナノ炭素物質が関わる種々の高次構造体のトポロジーデザインによる物性制御方法の提示を行うために、27年度で扱ったネットワーク構造に加えて、より多くの構造について幾何学構造の解析と安定性を探索する。具体的には、今までに扱うことのできなかった他の小さいフラーレンの幾何学構造の解析と安定性の探索を行い。前年度で高次構造体を組んでいない分子(C40、アセペンタレン分子)を構成単位としてネットワーク構造を組む。また、多環炭化水素分子は膨大な個数が存在するため、前年度でラジカルスピンを有する炭化水素分子に着目した流れで、ナノ炭素物質のスピン分極の可能性に絞って調査する予定である。また、ネットワーク構造の合成方法、合成経路の理論的探索を行い、物質設計の指針の提示を行う。得られた知見を統合し、形状と電子物性の普遍的な相関を明らかにし、ナノ炭素物質の物質設計の理論的指針の提示を行う。
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Research Products
(13 results)