2015 Fiscal Year Annual Research Report
強相関トポロジカル量子相に創発する新規物性現象の解明
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15J05184
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
宮腰 祥平 千葉大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | SPT相 / スピン系 / 密度行列くりこみ群 / エンタングルメント / ホールデン相 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、密度行列くりこみ群を主な研究手段として用い、スピンが1よりも大きな整数量子スピンハイゼンベルグ鎖におけるホールデン量子相のトポロジカル量子相転移に関する研究を行った。ホールデン量子相は近年、冷却原子系においてその実現性が非常に注目を集めており、アルカリ土類金属173Ybや87Srを用いることによってスピンが1よりも大きなホールデン量子相の可能性が指摘されている。特にSが1よりも大きい系では、通常のホールデン量子相だけでなく、中間的なトポロジカル量子相の実現性が指摘されており、大きな整数スピンをもつ量子系の理解を進めるという意義は大きい。しかし、Sが大きい系ではその大きな内部自由度によって生じる数値的な困難により、未だ充分な理解はなされていない。 本研究では、中間相として「ダイマーホールデン量子相」の実現が指摘されるボンド交替をもつハイゼンベルグ量子スピン鎖を理論模型に対して、密度行列くりこみ群を用いて大きなシステムサイズ(L≦74)に対する数値計算を行った。我々は量子相を調べる指標としてエンタングルメントスペクトラムを反周期境界条件と周期境界条件を課したそれぞれの有限系に対して適用した。その結果、境界条件に強く依存してエンタングルメントスペクトラムの縮退構造の違いが引き起こされることを明らかにした。特に捻れた境界条件における縮退構造は有限系のサイズ効果によらず、ホールデン量子相を保護する然るべき対称性の破れにともなってトポロジカル相転移が消失することを数値的に確認し、またVBS状態を用いた解析から無限系における対称性によって保護された量子相との密接な関係性を明らかにした。さらに密度行列くりこみ群とレベルスペクトロスコピーを組み合わせることにより、BKT転移があるような系でも、非常に高精度な相図の決定が可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、密度行列繰り込み群(DMRG)の手法の習得を行なうこととともに、スピンが1より大きい整数量子スピンHeisenberg鎖におけるHaldane量子相のトポロジカル量子相転移に関する研究を行った。特に、中間相として Dimer Haldane 相の実現が指摘されるボンド交替を持つ模型のentanglement spectrum を周期境界条件と反周期境界条件を課して計算し、その縮退構造の差異を明らかにした。Haldane量子相を保護する対称性の破れに伴ってトポロジカル相転移が消失すること、VBS状態を用いた解析から、無限系における対称性によって保護された量子相との密接な関係性があること、さらに、DMRGとレベルスペクトロスコピーを組み合わせることにより、BKT転移がある系でも高精度な相図の決定が可能であることを明らかにした。したがって研究の進捗としては順調であり、期待通りの成果を得ることができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策として、今回習得した密度行列くりこみ群の手法を各種強相関系に適用することにより、強相関トポロジカル量子現象の性質を明らかにする。特に、本研究で行ったレベルスペクトロスコピーを利用した多体量子系へのアプローチは非常に強力であり、本研究の課題とする強相関トポロジカル量子相を調べる意味や、他の量子相との差異を直接比較する上でも有効な指標となる。特に今回の研究では1次元スピン系の数値的な困難が伴うスピンの大きな系に対するものであったが、今後の研究では2次元系やフェルミオン系に関しても研究の対象として調査を行う。
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Research Products
(4 results)