2016 Fiscal Year Annual Research Report
金属内包フラーレン単分子接合を用いた高性能熱電素子の創製
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15J05196
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森川 高典 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 単分子接合 / 電流電圧特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に、単分子接合電子構造解明に向けた高速な電流電圧(I-V)特性計測システムの構築と動作の実証を行った。I-V計測により得られたカーブをフィットすることにより、熱電計測と同様に単分子接合の電子構造に関するパラメータを得ることができる。これまで、当研究グループでのI-V計測は、GPIBバスで電圧源付きピコアンメーターを制御して行ってきた。しかしながら、この方法はGPIBバスの帯域幅が小さいため、計測速度に限界がある。低速な計測では、計測途中に接合状態が変化したり、電圧印加による接合への影響が無視できなくなることから、高速、高確度なI-V計測を実現する必要があった。そのため、PXI Expressバスで接続したソースメジャーユニット(SMU)を使用して、高速に電流電圧計測を行うための計測プログラム及び計測系を設計・実装した。このシステムをAu-Oligo-Phenylene Ethynylene(OPE3)-Au接合へ適用し、分子接合のエネルギーアライメントおよびカップリングを各接合状態に対して見積もることにより、さまざまなAu-OPE3-Au接合状態に対する電子状態を明らかにした。この計測システムでは数GOhm程度までの分子接合に対しては同様に評価できる。多数のI-Vカーブのフィットに電子構造を理解する上での重要パラメータを大量に抽出して議論された報告例は少なく、機械的破断接合法(MCBJ)の安定性とPXI Expressバスの高速性を組み合わせることにより、さまざまな接合状態に対してその電子構造が評価できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
熱起電力計測のみでは、実験的に得られるパラメータがコンダクタンスと熱起電力の2つになるため、モデルとのフィットにおいても未知パラメータは2つまでとするしかなく、非対称な接合におけるカップリングの非対称性などを正確に評価することができなかった。2016年度に構築した電流電圧特性の高速計測システムを用いることにより、非対称なカップリングをもつ接合に対してもエネルギーアライメントとカップリングの評価が行えるようになった。熱電計測により、輸送を支配する分子軌道とエネルギーアライメント、平均的なカップリングが評価でき、電流電圧特性の計測によりエネルギーアライメントとカップリング、カップリングの非対称性の評価ができることから、より詳細な研究を行えるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の熱電計測に加えて、電流電圧特性からも電子構造解明が行えるようになった。今後は、金属内包フラーレンの熱電計測を行いつつ、電流電圧特性からさらに詳細な電子構造の検討を行う。
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Research Products
(1 results)