2015 Fiscal Year Annual Research Report
アレンを中間体とするアルキンの二重官能基化反応の開発と天然物の効率合成への応用
Project/Area Number |
15J05294
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
天児 由佳 千葉大学, 大学院医学薬学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ニッケル / アレン / ヒドロシアノ化 / 不斉転写 |
Outline of Annual Research Achievements |
窒素官能基を有するアレン(アレナミド)を別途合成し、ヒドロシアノ化を検討した。その結果、シアン化水素等価体としてアセトンシアンヒドリンを用いる従来の反応条件では、アレナミドの加水分解により生成した窒素化合物及びアルデヒドに加え、アセトンシアンヒドリンが直接付加した生成物のみが得られた。配位子のトリフェニルホスファイトより生成するフェノールによって、アレナミドが共役イミンに異性化し、加水分解及びアルコールの付加が進行していることが判明した。そこで、フェノールの生成を抑制すべく、配位子を中心とした反応条件の再検討を行った。 モデル基質として窒素官能基を有さないアレンを用いて配位子を検討したところ、メチルジフェニルホスフィン及びジフェニルホスフィノブタンを用いた場合、反応性が大幅に向上し、従来の最適条件よりも低温、短時間、かつ少ない当量のアセトンシアンヒドリンで反応が進行することを見出した。従来のヒドロシアノ化の報告例では、律速段階である還元的脱離を促進するため、ホスファイト等のリン配位子が用いられていた。本系でより電子豊富なホスフィン配位子が良い結果を与えたことは新たな知見である。詳細なメカニズムについて検討するとともに、本条件をアレナミドに適用する予定である。 検討の過程で、光学活性なアレンを用いてヒドロシアノ化を行った場合、アレンの軸不斉が生成物の不斉点に転写されることを見出した。転写率は配位子によって変化し、上述した高い反応性を示すメチルジフェニルホスフィン及びジフェニルホスフィノブタンを用いた場合に最も高い転写率を与えることを見出した。本反応のようにπアリルニッケル中間体を経由する反応では、生成物に至る反応経路が複数あるため、不斉転写が困難であり、報告例がほとんど無い。今後はヒドロシアノ化以外の付加反応への適用も検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アレナミドが、配位子のホスファイトより生成するフェノールによって容易に加水分解を受けることが判明したため、目的のアミノニトリルは得られていない。しかし、これらの改善を検討する過程で、モデル基質において電子豊富なホスフィン配位子が高い反応性を示すことを見出した。本条件をアレナミドに適用することで、目的のヒドロシアノ化が進行することが期待出来る。 さらに、本触媒系を用いることで、光学活性なアレンの軸不斉が生成物の不斉点に効率的に転写されることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
ホスフィンを配位子に用いた条件をアレナミドに適用し、アレナミドのヒドロシアノ化の検討を行う。アルキンを原料としたアレナミド合成法の検討も行う。 ホスフィン配位子を用いた場合に反応性が向上する理由、及び不斉転写における転写率が上昇する理由に関して、リンのNMRや計算化学等を用いて解析を行う。
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Research Products
(2 results)