2015 Fiscal Year Annual Research Report
青枯病細菌の植物感染最初期段階に関与する走化性分子機構の全貌解明
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15J05572
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
緋田 安希子 広島大学, 先端物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 青枯病 / 走化性 / 走化性センサータンパク質 / 植物感染 / 植物根滲出液 / ホウ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
青枯病菌の植物感染に重要な走化性センサータンパク質(MCP)を特定するためにまず解析ツールの構築を行った。青枯病菌の保有する22種類のMCPをすべて破壊したMCP全破壊株を作製し、本株にプラスミドにて各MCPを相補することにより、「22MCP単独発現株ライブラリ」を構築した。青枯病菌のように20種類以上のMCPを保有する細菌においてMCP単独発現株を構築した例はなく、MCPに関する詳細な解析において重要なツールになると思われる。 青枯病菌は植物感染の際、植物の根から分泌される根滲出液を感知して走化性により植物へと接近すると考えられる。そこで、感染に重要なMCPを特定するために、まずは植物根滲出液走化性に関わるMCPの特定を試みた。構築した22のMCP単独発現株において、トマト苗から採取した根滲出液に対する走化性を測定することで根滲出液走化性に関わるMCPのスクリーニングを行った。その結果、MCP01、MCP10、MCP14が根滲出液走化性に関わることが明らかとなった。MCP14については植物感染に関与することを既に明らかにしている。今回根滲出液走化性に関与すると特定された他の2つのMCPについても、MCP14と同様に植物感染に関与する可能性が高いと考えられる。 また、青枯病菌がホウ酸に対しても走化性を示すことが偶然発見された。ホウ酸走化性は他の細菌では例はなく、今回初めて発見された走化性であると思われる。MCP単独破壊株を用いた解析により、ホウ酸を感知するセンサーMCP11の特定に成功した。上記の実験によりMCP11は根滲出液走化性には関与しないという結果になったが、ホウ酸は植物とも密接に関係する化合物であることから、青枯病菌の植物感染に何らかの形で関与する可能性が高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、「22MCP単独発現株ライブラリ」を用いることで植物根滲出液走化性に関わるMCPをすべて特定できると想定していた。しかし、本ライブラリで特定できた根滲出液MCPをすべて破壊しても、根滲出液走化性は解消しなかった。つまり、本解析で特定できた根滲出液MCPは一部であり、すべて特定するには至らなかった。いくつかの解析の結果、22MCPの中には他のMCPの補助を受けて機能しているものもあり、そのようなMCPの場合、単独では機能できないのではないかという可能性が浮上した。そのため、当初有効なMCP解析ツールになりえると予想していた「22MCP単独発現株ライブラリ」は、現時点では真に有効なものであるとは言い難い。 本ライブラリを用いて植物根滲出液走化性に関わるMCPをすべて特定することはできなかったが、22MCPすべてが単独で機能できないわけではなく、実際に本ライブラリを用いた解析により根滲出液を感知するMCPをいくつか特定することができた。また、全く別の解析ではあるが、青枯病菌の感染に重要である可能性の高いホウ酸走化性を発見することもできた。そのため、青枯病菌の感染に関わるMCP/走化性の特定に向けて、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に特定した植物根滲出液走化性に関わるMCPのうち、機能未知のMCP10に関してリガンド化合物の特定を試みる。そして、MCP10が根滲出液中のいずれの成分を感知するのかを明らかにする。それと並行して、MCP単独発現株が正しく機能しなかった原因について詳細な解析を行う。原因究明の結果、「22MCP単独発現株ライブラリ」が有効な解析ツールとなったならば、植物根滲出液走化性に関与するMCPの完全解明を試みる。 また、当初の計画にはなかったが、青枯病菌の植物感染に関与する可能性が高いと思われるホウ酸走化性が発見されたため、その詳細な解析を行う。ホウ酸に対する走化性は他の細菌においても私の知る限り一切報告がない。そのため、まずはホウ酸走化性の分子機構に関する詳細な解析を行う。そして、ホウ酸走化性と植物感染の関与についても解析していく予定である。
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Research Products
(3 results)