2015 Fiscal Year Annual Research Report
木質バイオマスの有効利用に向けたイオン液体技術の確立
Project/Area Number |
15J05592
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
神林 徹 国立研究開発法人 森林総合研究所, 木材改質研究領域, 任期付研究員
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2016-03-31
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Keywords | 木材 / イオン液体 / 細胞壁 / 液化 / 組織構造 / トポ化学 / 顕微鏡 / 顕微ラマン分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境調和型溶媒であるイオン液体に木材液化能が見出されて以来、イオン液体処理による木材の新規化学変換技術に関する研究が盛んに行われてきた。しかし、イオン液体と木材の反応性に関する基礎的な情報は未だ十分ではない。本研究では、イオン液体中での木材の液化反応メカニズムを組織形態及びトポ化学的な観点から明らかにすることを目的とした。 セルロースに対して優先的に反応する1-エチル3-メチルイミダゾリウムクロリド([C2mim][Cl])と、リグニンに反応しやすい1-エチルピリジニウムブロミド([EtPy][Br])の2種類のイオン液体を用いた。イオン液体処理木材に対して各種顕微鏡技術を駆使して分析を行った結果、木材細胞壁はイオン液体中で膨潤を伴い液化が進行するが、液化過程における膨潤挙動や微細構造の変化は樹種や組織に依存し多様であることが示された。また、[C2mim][Cl]は細胞壁構造を維持しながらセルロースを非晶化させるが、[EtPy][Br]はセルロースの結晶に大きな影響は及ぼさないことが判明した。顕微ラマン分光法を用いて化学成分変化を細胞レベルで分析した結果、細胞の種類や壁層によりスペクトルの変化が異なり、細胞間層に分布するリグニンはイオン液体に対して抵抗性を有すること、柔細胞は繊維細胞や道管に比べて反応性が低いことが明らかとなった。また、[EtPy][Br]処理過程において、リグニンは細胞壁二次壁で溶出あるいは変質が顕著であるが、細胞内腔付近に多く残存することが分かった。[C2mim][Cl]処理では、アニオンが細胞壁中の特にリグニン含有率が高い領域に取込まれ定着することが確認された。 イオン液体処理による木材細胞壁の液化過程における組織構造変化の特徴を把握し、同時に細胞レベルでの化学成分変化を解明することで、より効果的な液化処理条件やイオン液体の選択が可能になると期待できる。
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Research Progress Status |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(9 results)