2015 Fiscal Year Annual Research Report
ルソーの哲学的方法論の解明:歴史記述の問題を中心として
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15J06088
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
淵田 仁 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ルソー / 啓蒙思想 / 歴史記述 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の中心課題は、ルソーの歴史記述における方法の解明であった。中心となるテクストは『人間不平等起源論』および『エミール』であった。 『エミール』における歴史教育の議論を歴史の記述方法として読み返すことで、ルソーにおける古典的レトリック影響や17-18世紀において展開した考証学に対する批判を明確にすることができた。 また、ルソーだけではなくディドロの『百科全書』項目「事実」やコンディヤックの形而上学における「明証性」概念の明確化も行った。この作業によって、各フィロゾーフたちの間で流通していた概念(例えば「事実」概念)が各人の理論のなかでどのような効果、作用を持っていたかについて明らかにすることができた。 7月13日から8月22日にかけてフランス・パリに滞在し、フランス国立図書館等で資料調査やフランスの研究者たちとディスカッションを実施した。グルノーブル第三大学のイヴ・シトン教授とは、本研究に関する議論や今後の研究成果の発表に関する打合せを行った。 また、パリ滞在中にはロッテルダムで行われた国際18世紀学会に参加し、各国の研究者たちと交流し今後の研究を国際的に展開するための基盤を形成した。 27年度末の3月には日本フランス語フランス文学会関東支部(「ルソーにおける「歴史家」の問題」)および『百科全書』・啓蒙研究会年次大会(「啓蒙の世紀における〈fait〉のあり方:ディドロ、ルソー、コンディヤックを中心に)において研究成果に関する発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りルソーの哲学的方法論の一端を成す歴史記述問題に関してある程度の成果を得ることができたが、論文の刊行までには至らなかった。しかし、27年度の成果は28年度中には刊行・公開することができるよう論文執筆を行っている。また、掲載されることが決まっているものもあり、この意味においてもおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は27年度の成果の公表とルソー以外のフィロゾーフのテクスト読解に重きを置く。また、27年度の資料調査でいくつか見落としていた二次文献も数多く見つかり、それら先行研究の成果を踏まえ、自らの研究の研究史上の意義を再確認したい。
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Research Products
(2 results)