2016 Fiscal Year Annual Research Report
ルソーの哲学的方法論の解明:歴史記述の問題を中心として
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15J06088
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
淵田 仁 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 特別研究員(PD) (00770554)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ルソー / 啓蒙主義 / 分析的方法 / 歴史叙述 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の中心課題は、ルソーにおける認識の方法とその思想的文脈の解明であった。いかにして事物を認識するかという哲学的問いに対して、ルソーの『道徳書簡』や『エミール』を中心に検討した。その際に、ルソーに留まらずコンディヤックの『人間認識起源論』における分析的方法(事物を分解し再構成することで認識する態度)やパスカル『パンセ』における内的感覚の問題も検討することで、ルソーの思想的立ち位置を立体的解明することができた。この成果については平成28年度に論文として刊行することができなかったが、今後刊行予定である。 この研究から明らかになったことは、ルソーのテクスト上に表れる断片的な批判的言説が当時主流であった分析的方法への理論的抵抗として読解することが可能であり、またルソー自身単なる批判ではなく、哲学的伝統に根ざした新しい方法の創出を目指すものであったということである。このような理論的素地を踏まえることでルソーの歴史叙述の問題が明確になるのである。 業績について言えば、平成27年度に刊行することができなかったルソーにおける歴史家の問題についての論文をフランス語フランス文学会関東支部論集に掲載した。もうひとつ、日本のルソー研究会のWEBサイト「プレテクスト:ジャン=ジャック・ルソー」において、ルソーの政治思想における「憐れみの情」概念に関する研究ノートを公開した。この「憐れみの情」については別の論文も執筆したが、刊行が送れたため平成28年度には公開されなかった。 また国際的活動に関して言えば、フランス語雑誌『multitudes』において日本の哲学者東浩紀の著作に関する共著論文を掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部初期の計画とは研究の順序が変わった部分もあるが、本質的にはおおむね順調に進展している。昨年度刊行できなかった成果も刊行することができた。また本年度の研究を通じて、ビュフォンの『人間論』といったいくつかの参照すべき著作も選定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、まずフランス語フランス文学会ないしルソー研究の国際誌へ投稿するための論文執筆を完成させることが第一目標として挙げられる。また研究内容として、ルソーの歴史叙述の政治性を検討すべく、歴史と政治体の問題について研究を進めたいと考えている。
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Research Products
(4 results)