2015 Fiscal Year Annual Research Report
新規睡眠制御遺伝子Sleepyの機能解析による睡眠覚醒制御の分子・神経基盤の解明
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15J06369
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
本多 隆利 筑波大学, グローバル教育院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 睡眠 / フォワード・ジェネティクス / 網羅的行動テストバッテリー |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者の所属する研究室では、候補遺伝子からではなく、睡眠異常という表現型をもとに原因遺伝子を探るフォワード・ジェネティクスの手法によって、睡眠制御機構の中心を担う新たな遺伝子の同定に挑んできた。これまでに、極端な睡眠時間延長を呈するSleepy変異家系や、顕著なREM睡眠の短縮・断片化を呈するDreamless変異家系などが発見された。睡眠異常の原因となる遺伝子変異はSleepy遺伝子に存在する(投稿中)が、Sleepy蛋白の睡眠覚醒を含めた脳神経機能制御における役割は報告がなく、Sleepy蛋白の研究を通じて睡眠覚醒制御を含む高次機能の理解が広がると考えられる。これらの経緯から、申請者は、Sleepy遺伝子の機能解析を通じた睡眠覚醒を制御する細胞内シグナル伝達系・神経回路の同定を進めている。変異型Sleepyはスプライス部位の点突然変異によって、種を超えて保存されたリン酸化部位を含むエクソンがスキップしたものであることが明らかとなった。従って、Sleepy変異家系マウスでは、リン酸化部位の欠損より、極端な睡眠時間延長という表現型に至ると予想される。上記仮説を検証するために、本年度、目的のリン酸化部位に点突然変異を導入し、1)恒常的に非リン酸化された状態、2)恒常的にリン酸化された状態、を模倣した状態を生体内で再現した遺伝子改変マウスをCRISPR法により作製することに成功した。加えて、上記の遺伝子改変マウスの脳波・筋電図(EEG・EMG)測定による睡眠覚醒の表現型を解析し、顕著な睡眠異常の表現型が得られている。順遺伝学により樹立されたマウス家系は、睡眠覚醒疾患モデルマウスとして、睡眠と精神疾患、学習・記憶、認知脳機能等との関連性についても検討できる。本年度、Sleepy・Dreamless変異家系に対し、網羅的行動テストバッテリーを実施し、新規の行動表現型を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画通りに、目的の2種類の遺伝子改変マウスをCRISPR法により作製完了した。また、それらの遺伝子改変マウスの脳波・筋電図(EEG・EMG)解析を進め、顕著な睡眠覚醒異常の表現型を明らかにした。合わせて、それらの結果をサポートするmRNA・タンパク質レベルでの検証実験を遂行した。また、当初2年目以降に予定していた、網羅的行動テストバッテリーは、初年度の段階で、独自に立ち上げ、最適化を進め、新規の行動表現型を得ている。これらの表現型の記述は、睡眠と精神疾患や認知脳機能等との関連性を理解する上で重要である。また、同定した新規睡眠制御遺伝子の生体内における未知の機能を探る上でも、今後の分子・神経回路基盤の解明が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
睡眠覚醒研究には、in vitroでの検討のみならず、マウス個体レベルでの検討が不可欠である。そのために、上記2種類の遺伝子改変マウスに加え、Sleepy遺伝子末端にFLAGタグをCRISPR法によってknock-inした遺伝子改変マウスも作製中である。作製したマウスの脳組織に対して、FLAG抗体を用いた免疫沈降法により、in vivoにおいてSleepyと相互作用しうる因子の同定を進める。 Sleepy変異マウスの睡眠過多を引き起こす責任部位および細胞集団を明らかにするため、Sleepy変異によってスキップするエクソンをloxPで挟んだ遺伝子改変マウスを用いる。現在、Sleepy floxマウスの繁殖を進めており、並行してCreドライバーマウスと交配を進めている。来年度は、これらのマウスを用いて、変異型Sleepy遺伝子の部位・細胞種特異的発現の効果を検討していく。 網羅的行動テストバッテリーの結果については、薬理学・電気生理学実験、変異型遺伝子の部位・細胞種特異的発現による効果の検討などを組み合わせて、得られた行動表現型の分子・神経回路基盤の解明を目指す。
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