2015 Fiscal Year Annual Research Report
狂犬病ウイルスの排泄機構と感染初期の免疫細胞が病理発生に及ぼす影響の解明
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15J06440
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
君付 和範 北里大学, 獣医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 洞毛 / 唾液腺 / 舌 / メルケル細胞 / 味蕾 / 腐敗 / フィリピン / 野外発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
フィリピン国内で捕獲・回収された狂犬病発症犬の頭部組織を用いて感染末期のウイルス抗原の分布および舌における狂犬病ウイルスの排泄機構を病理組織学的に検索した。 1.感染末期のウイルス抗原の分布 腐敗などにより、舌、唾液腺は検索対象外となる組織が多数みられた。一方で、鼻口部皮膚はほとんどの検体で観察が可能であった。ウイルス抗原の検出では舌、耳下腺、下顎腺で多数の検体が陰性を示すのに対し鼻口部皮膚では脳と概ね一致していた。洞毛のウイルス抗原はメルケル細胞に局在することが判明した。脳組織において腐敗が比較的進みウイルス抗原陽性像が減弱していた検体に関しても、洞毛では明瞭なウイルス抗原陽性像が観察された。狂犬病ウイルスは洞毛に存在するメルケル細胞をターゲットにすること、洞毛の陽性検体と脳の陽性検体の結果が一致したことから、洞毛は狂犬病ウイルス抗原の検出に極めて有用であることが示唆された。特に、死亡例と安楽殺例にかかわらず、検出されたことからも生前診断としても極めて有効であると考えられる。また、脳と比較し、腐敗によるウイルス抗原の減弱が少ないという点から、脳に代わる診断部位になりえることが示唆された。 2.舌における排泄機構 狂犬病ウイルスは脳に到達・増殖した後に舌咽神経を下降し、有郭乳頭のⅢ型味蕾細胞およびエブネル腺の腺房上皮に感染する。Ⅲ型味蕾細胞にウイルス抗原が認められたことから、味覚が麻痺し、異物を食べるような症状や飲水困難などが誘引されていた可能性が示唆された。また、舌におけるウイルスの排泄機構は耳下腺・下顎腺と異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は3年目の研究計画であったが、フィリピンRITMでの狂犬病発病犬の捕獲・回収が予想以上に進行したため、1年目に実施した。達成目的の大部分である野外発生犬におけるウイルス抗原の分布について、頭蓋皮膚、唾液腺、舌、などにおけるウイルス抗原の分布を明らかにすることができた。また、これらの知見を元にして洞毛におけるウイルス抗原の局在や舌での排泄機構について証明することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、その他の末梢組織(鼻腔、舌下腺、眼球など)についても病理組織学的に検索を進めていきたい。また、今年度得られたデータを感染モデルマウスで再現し、ウイルスの感染経路や感染末期における末梢組織の病態メカニズムを明らかにしていきたい。
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Research Products
(3 results)