2015 Fiscal Year Annual Research Report
ワブラー法による電子ビーム制御を利用した高線量率X線フラットビーム治療装置の開発
Project/Area Number |
15J06453
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
坪内 俊郎 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | モンテカルロシミュレーション / 平坦な線量分布 / 治療計画装置による比較 / 磁場解析ソフトウェア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、金属標的に衝突する電子の軌道を電磁場で制御することにより、発生する制動X線の分布を調整し、平坦な線量分布を生成する手法を提案した。これにより高線量率で平坦な線量分布の取得が可能となり、臨床でよく利用される照射野サイズにも適応できる。シミュレーションや基礎実験によって本手法の実現可能性を明らかにすることが本研究の目的である。 平成27年度は交付申請書に示したとおり、シミュレーションに基づいた本手法の妥当性検証と、購入した電磁界解析ソフトウェアによる磁場パラメータの導出の2点を軸に研究を実施した。さらに本手法が現在のX線治療装置にとって有用であることを、これまでの治療データを用いて検証を行った。以下にそれぞれの内容に対する結果を記す。 (1)シミュレーションによる本手法の妥当性検証:モンテカルロシミュレーションによって、高線量率を維持したまま平坦な線量分布が取得できることを確認した。この結果はICRR 2015にて発表した。ただし、シミュレーション体系を簡便にして計算を行っていたこともあり、更なるシミュレーションを継続中である。 (2)電磁解析ソフトウェアによる磁場パラメータの導出:平成28年度以降に実施予定の本手法の実現可能性を示すための実験を行う前段階の準備として、磁場パラメータを導出することは必須条件である。27年度中に導出することは出来なかったが、シミュレーションに必要な体系を現在構築中である。 (3)過去の治療データの比較検討による本手法の有効性の検証:過去の強度変調X線治療を受けた患者データを利用し、平坦な線量分布とそうでない分布で治療計画を再び作成し、物理パラメータを指標に比較した結果、平坦な線量分布で作成した方が優れていることを確認した。この結果は、平坦な線量分布が比較的小さな照射野にも有効であることを示しており、本手法の有用性を示す結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記でも記したとおり、平成27年度はシミュレーションによる本手法の有効性の検証・磁場解析ソフトによる磁場パラメータの導出を行い、さらに当初計画をしていなかったが、本手法の有効性をより確かなものにするために、過去の治療データを利用し、治療計画装置による治療データの比較検証の3つを軸に研究を行った。現在までの進捗状況としては以下の通りである。 (1)ミュレーションによる本手法の妥当性検証:上記にも示したとおり、モンテカルロシミュレーションによって本手法の有効性を確認することができた。これにより、従来の金属製の平坦化フィルタを用いた方法よりも、本手法が有効であることを示すことができた。ただしシミュレーション条件を簡便化して計算を実行したため、従来のX線治療装置のデータとの比較は出来ていない。詳細な体系を構築し、今現在更なる詳細なX線データを取得するためにシミュレーションを継続中である。 (2)電磁解析ソフトウェアによる磁場パラメータの導出:平成27年度に購入した磁場解析ソフトによって、本手法の検証に必要な基礎実験で使用予定の電磁石の磁場パラメータを導出する予定である。計画上は平成27年度中に磁場パラメータの取得までを目指していたが、そこまでには至らず、現在シミュレーションに必要な体系を構築中である。 (3)過去の治療データの比較検討による本手法の有効性の検証:この研究内容は、従来の計画には無いものだったが、本手法の有効性を示すためには必要な項目と判断して比較検証を行った。治療計画装置を用いた過去の患者データの比較に関しては結果が揃ったので、論文を執筆中である。ただし追加で検討が必要と考えている項目もあるため、別のソフトウェアを使用して検証し、その結果も論文に組み込む予定である。今回得られた結果は平成28年度中に学会で報告予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、当初の計画に対して少し遅れている研究項目もあったが、追加で検討した研究項目もあったため、全体として順調に研究を進めていくことができた。平成28年度以降の研究計画としては、平成27年度と同様にシミュレーションを軸に研究を進めていき、同時に実験の準備を進めていくと当初は考えていた。しかしモンテカルロシミュレーションはかなりの時間を必要とすること、また基礎実験によって本手法の有効性を示すことはシミュレーション以上に効果的な手段であることも考慮して、平成28年度は実験を軸に、実験の前準備及びデータの取得を目標に研究を進めることを予定している。ただし実験には設備が必要となってくるため、状況によっては当初の計画通りシミュレーションを軸にした研究方針になる可能性もある。平成28年度の前期で実験かシミュレーションのどちらを軸に研究を進めていくかを決める予定である。どちらの計画に沿っても研究を滞りなく進められるように準備を進めていく予定である。実験設備の候補としては大阪大学内の共同研究施設を利用する予定で、実験の打ち合わせを今後行っていく予定であり、実験を軸にした研究の環境を整えて行く予定である。
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Research Products
(1 results)