2016 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギー天体における強電磁場の微視的散逸過程と巨視的空間構造の理論研究
Project/Area Number |
15J06571
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
髙本 亮 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ワイベル不安定性 / 相対論的乱流 / 相対論的磁気リコネクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は高エネルギー天体において、相対論的ジェットやパルサー星雲などで発生しているプラズマの強磁場エネルギーの散逸過程について解明を行う。相対論的ジェットやパルサー星雲は、その中心天体であるブラックホールと中性子星の回転エネルギーをその磁気圏の磁場を介してジェットやパルサー風に渡し相対論的な速度を持つプラズマを駆動していると考えられている。しかし理想流体近似の範囲内ではその磁場のエネルギーを効率よく速度に変換出来ず、観測を説明出来ないという大問題が存在している。本研究はプラズマシミュレーションと相対論的散逸磁気流体コードを用いた解析を行う事で、磁場エネルギーの効率の良い磁場変換過程の発見とその天体物理現象への適用可能性を探る。
今年度は研究計画に従い、相対論的磁気リコネクションの物理と乱流の効果について研究を行った。特に前年度に引き続き、相対論的プラズマにおける磁気乱流の物理について詳細な研究を行った。その結果、非相対論的な場合と異なり相対論的磁場を持つプラズマ内では磁気乱流が磁気音波を非常に強く駆動するようになることを発見した。さらにその結果非相対論では発見されていなかった、磁気音波モードとアルフベンモードが強く結合した新たな乱流領域が存在する事を突き止めた。本成果はThe Astrophysical JournalにLetterとして出版されている。また現在はさらに解析を進め、その詳細を論文にまとめている。 また相対論的プラズマでは無衝突プラズマの効果として、慣性長や粒子のジャイロ半径などのプラズマスケールの現象を無視する事が出来ない。特に相対論的なプラズマではワイベル不安定という磁場を生成する不安定性が重要になる。私はこの不安定についてスーパーコンピュータ「京」を用いた大規模プラズマシミュレーションを行う事で、その構造の時間発展について現在解析を行っている最中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に相対論的な磁場や速度を持つ場合のプラズマ乱流と磁気流体乱流について詳細な解析を行った。これらの現象は磁場の散逸という観点から直接は関係無いが、実際の宇宙プラズマは乱流が存在する事が自然であり、さらに前年度の研究から乱流が磁気リコネクションを加速することが示されているため、その磁場散逸に与える影響の解明が本研究テーマに本質的に重要である。これらの乱流研究は非常に高い数値的解像度が必要になり、さらにプラズマシミュレーションの場合はさらに運動量空間の十分な解像度が重要になるため、数値計算コストが非常に高くなってしまうという問題があった。本年度私は理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」、CfCAのアテルイ、NIFSのプラズマシミュレータの3つの数値計算機資源において、それぞれ非常に大きな計算機資源の使用が認められた。そしてそれらのマシンで計算を行う事により、これまでは難しかった3次元空間内での乱流についてパラメータサーチも含めて研究を行う事が出来た。「京」とプラズマシミュレータを用いた結果はいまだ論文にはまとめていないが、順次まとめて論文として出版していく予定である。
これらの状況を鑑みて、私の研究計画の3年目に向けておおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も幸いCfCAのアテルイと理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」において、前年度と同規模の非常に豊かな数値計算資源を使う事が出来る。本年度も昨年に引き続きこれらの計算機資源を用い、乱流まできちんと考慮した磁場散逸過程について相対論的磁気リコネクションを主な対象として研究を遂行していく。 またプラズマシミュレーション技術についても習熟が進んだため、「京」を用いる事で3次元での衝撃波と電流面の相互作用などの非自明な空間構造を持つ場合のプラズマの進化についても視野に入れていく。さらに観測への提言として、得られた現象が実際にどのような電磁波を発し、どのようなライトカーブやスペクトラムを形成するかについても解析を行い、積極的に観測計画への提言も行っていく。
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Research Products
(6 results)