2015 Fiscal Year Annual Research Report
セルビアのポピュラー音楽「ターボフォーク」における民族表象の展開および受容の研究
Project/Area Number |
15J07138
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上畑 史 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ターボフォーク / ポップフォーク / 新作曲民謡 / 民謡調大衆音楽 / 民俗音楽 / アイデンティティ / バルカン / セルビア |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は、セルビアのポピュラー音楽「ターボフォーク」と民族的アイデンティティの相関を次の3点から実証的に明らかにすることである。 【1】セルビア・バルカン地域の民俗音楽の特徴と欧米のポピュラー音楽とが融合し、トルコ・アラブ風の「オリエンタル」な音楽要素を含むターボフォークにおいて、「ヨーロッパ」と「オリエント」の狭間で歴史的に創り上げられてきたセルビアの多層的な民族的アイデンティがどのように反映しているのか。【2】人気を得ながらも同時に激しい非難を浴びているターボフォークの発信者・受容者がどのような意図・認識で当該音楽に接しているのか。【3】国外への流通拡大・移民増加による社会の変動が【1】【2】にどのような変容をもたらしているのか。 これらを解明するため(a)ターボフォークにおける民族的アイデンティティの表象の分析(b) ターボフォークの発信者・受容者の活動実態と文化構造の検証(c)国外との相互的文化交渉の調査・分析を行う。 平成27年度は現地での資料収集とフィールド調査を行い、特に上記(a)(b)に取り組んだ。ベオグラード大学音楽芸術学部、国立図書館、国営ラジオ局他で資料収集を行うとともに、ターボフォーク業界関係者(プロデューサー、作詞作曲家、キーボーディスト、ギタリスト、放送局職員他)への聞き取りを実施し、歌手2名とのコンタクトを開始した。さらに首都ベオグラード及び地方都市スレムスカ・ミトロヴィッツァのクラブでの参与観察と、同会場の来場客へのアンケート調査を行った。 また2015年12月に香港大学で開催された国際音楽学会東アジア大会(IMSEA2015)において、"Music In The 'Folk Spirit': Conflicting Interpretations of 'Orientalness' in Modern Serbia." という題目で口頭発表し、研究の経過を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査・研究ともにほぼ計画通り進んでおり、おおむね順調である。 ターボフォークのマネージメント兼レコード会社スタッフとのコンタクトは開始したが、今年度は日程調整がつかなかったため、次年度に実施する。またターボフォークの音楽実践の場のひとつである結婚式会場での現場調査に関し、事前に挙式の情報を得ることができなかったため、今年度は実施できなかった。次年度はより広く情報を収集し、結婚式会場での調査を実現させる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度と同様に当初の計画に沿って調査研究を進める。また次年度は、ある程度調査データが収集できた段階で、積極的に分析結果・成果を公表・発表していく。様々な機会を得て、アウトプットを行っていきたい。
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Research Products
(2 results)