2015 Fiscal Year Annual Research Report
反応性膜蛋白質可溶化試薬の開発と革新的膜蛋白質フィルム化への応用
Project/Area Number |
15J07454
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
小枝 周平 名古屋工業大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 可溶化試薬 / 膜蛋白質 / ペプチド / 生体直交反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は反応性官能基を持つ膜蛋白質可溶化試薬の合成、物性評価、それを用いた膜蛋白質ゲルの作成を行い、その成果を学会にて発表を行った。 まず、反応性官能基として生体直交性反応の一つとして広く知られるヒュスゲン環化反応が可能なアルキニル基を導入したalkyne-PG-surfactantの合成を行った。alkyne-PG-surfactantの界面活性剤としての基礎物性の評価(動的光散乱法による水中での会合体形成能評価、臨界ミセル濃度測定)から、2本鎖型のジェミニ型界面活性剤に特徴的な物性をもつことが確認された。そこで次に、膜蛋白質として、シアノバクテリアや高等植物の光合成に中心的な役割を果たしている膜蛋白質である、光化学系I(PSI)を用いて膜蛋白質可溶化試薬としての機能評価を行った。PSIの可溶化を行った結果、PSIには変性が見られなかった。これは膜蛋白質の変性を抑えながら、膜貫通領域に選択的にアルキニル基を集積させていることを示唆するものであった。続いて、Huisgen環化反応を介した膜蛋白質ゲルの作成を行った。両末端にアジド基が修飾された高分子である Poly(ethylene glycol) bisazide(分子量2000)を用い、膜蛋白質同士を alkyne-PG-surfactant を介したヒュスゲン環化反応による架橋によるゲル化を行った。これらの結果より、検討を行っているPG-surfactantに、生体直交性反応の一つとして広く知られるヒュスゲン環化反応が可能なアルキニル基を導入したalkyne-PG-surfactantを用い、二官能性のアジド化高分子を用いることで、膜蛋白質PSIの集合組織化を、蛋白質の変性なしに進行させることが可能であることが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、膜蛋白質を変性させることなく膜蛋白質の膜貫通領域に選択的に反応性官能基(ヒュスゲン環化付加反応が可能なアルキニル基)を集積させることに成功している。また、ヒュスゲン環化付加反応を介した高分子材料を架橋することで膜蛋白質を含んだゲルの作成に成功している。 また一方で、蛋白質材料を固定化する部材として、ナノファイバーからなる不織布の作成に成功している。 以上のことから、膜蛋白質ゲルの作成やフィルム化の部材の作成に成功しており、次年度で行う予定である膜蛋白質のフィルム化の基礎は出来ていると考えている。 しかし、可溶化試薬のアミノ酸部分の配列や使用する膜蛋白質など、もう少し大きく振る必要があったと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、ヒュスゲン環化反応を用いた膜蛋白質ゲルを用いてフィルム化を行っていきたい。現在使用している可溶化試薬には一つアルキニル基が修飾されているが、これでは少しゲルが緩くなってしまいうまくフィルム化することが難しい。このことから、うまくフィルム化を行う際に適用可能な硬さを持つゲルを作成する為、架橋点となるアルキニル基の修飾数を増やすことで、ゲルの粘度や硬さを調節し、最適な膜蛋白質ゲルの作成方法を検討していく。 不織布ナノファイバーについては、現状のナノファイバーでは、膜蛋白質のような超分子複合体では、変性してしまうことがある為、不織布の架橋にも生体直交反応を用いることで、膜蛋白質に優しいナノファイバーの作成を行っていく。 一方で高分子量化可溶化試薬を作製することで膜蛋白質を変性させにくい環境を作製していく。膜蛋白質をナノデバイス化する際には、可溶化試薬を低濃度条件で扱わなければならない場面も多く、その際には集合組織化の前段階ですでに膜蛋白質どうしの凝集がおこり、精密な配列固定化が困難となることも危惧される。そこで、可溶化試薬を高分子量化することで膜蛋白質との相互作用を強めることで低濃度条件でも可溶化することが可能となると考えられる。これらを達成するために、当研究室ですでに開発しているPG-surfactantをベースとし、柔軟なリンカーペプチドを介した多量化を行うことで、高分子量化可溶化試薬の作製を行う。これにより可溶化試薬の高分子量化による疎水性相互作用の強化が期待され、低濃度でも可溶化試薬が剥がれないと考えられる。 以上を組み合わせることで、膜蛋白質を変性させないナノデバイスの作製を行う。
|
Research Products
(6 results)