2016 Fiscal Year Annual Research Report
拒絶感受性の高い個人が示す社会的排斥に対する判断の歪みとその神経基盤
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15J07499
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川本 大史 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 拒絶感受性 / 好奇心 / ERP / サーモグラフィ / 身体性認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究課題について、拒絶感受性に加えて好奇心究に着目した研究を実施した。主な成果は次のとおりである。(1)拒絶感受性は、好奇心と精神的健康の関連を媒介することが明らかとなった。(2)好奇心旺盛な個人は拒絶の影響を受けにくいことを示した。具体的には、好奇心が拒絶と人生満足感との関連を調整することが明らかとなった。(3)しかし一方で、好奇心旺盛な人は友人から拒絶されやすいことが示唆された。(4)拒絶感受性の高い個人は関係性の欲求に加えて、自律性や有能感が低いことが示された。
拒絶感受性と関連することが予想される心理生理基盤について環境要因に着目した検討を行った。(1)孤独感の高い個人は日常で寒さを感じやすいことが明らかとなった。サーモグラフィを用いた実験から、孤独感の高い個人は寒さと関連する刺激に対して顔温度が上昇することが明らかとなった。この反応は防衛反応・覚醒を反映している可能性がある。(2)5歳児を対象とした実験において、一人で課題を実施する場合と親が隣で応援しながら課題を行う場合でポジティブ・ネガティブフィードバック処理が異なることが示された。具体的には、フィードバック関連陰性電位は一人のときよりも親と一緒の場合で振幅が大きくなった。このことは、5歳児において良し悪し判断を行う場合に親のサポートが重要であることを示唆している。
以上の成果は、拒絶感受性の発達・維持について親の心理的あたたかさが重要である可能性、特異的な生理反応について身体温度変化が有効である可能性、開放的な認知・感情的特徴が拒絶感受性の低下に有効である可能性を示唆している。今後は、その他の認知的脆弱性とその神経基盤を検討するとともに、2つの研究の流れを統合する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究課題について期待通り進展があった。具体的には、拒絶感受性の認知・行動的特徴について、好奇心が密接にかかわることを示した。さらに研究課題を発展させて、発達的・神経科学的視点から子供のネガティブ・ポジティブフィードバック処理には親の適切なサポートが重要であること可能性を示した。最後に、生理学的視点からサーモグラフィを用いた実験を行い、孤独感と顔温度反応が関連することを示した。一連の結果は、親や周囲からのあたたかなサポートが拒絶に対する脆弱性と関連する重要な要因の1つであり、適切なサポートがない場合は、身体・生理・認知・行動といった広範囲の反応に影響を及ぼす可能性を示している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、発達的観点・身体反応の2つの側面から研究を拡張させることができた。今後は、これら拡張した視点と研究課題を統合的に捉える必要がある。具体的には、拒絶感受性が形成される発達要因や、拒絶感受性のが示す特異的な身体反応についても考慮した統合的なモデルを提案する予定である。モデルに基づき、拒絶感受性が示す特異的な認知・身体・生理反応について更なる実験を行う。
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Research Products
(7 results)