2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J07530
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中立 悠紀 九州大学, 地球社会統合科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 東京裁判 / BC級戦犯裁判 / 戦犯 / 戦犯釈放運動 / 復員官署法務調査部門 / 戦争受刑者世話会 / 旧軍人 / 靖国神社 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は1952年前後に日本で起きた戦犯釈放運動と、戦犯を「名誉回復」させたという諸事象の全貌を明らかにすることを目的にする。 本年度は主に以下の二点について研究を行ってきた。①数千万の署名を獲得した戦犯釈放署名運動を、どのような機関がどのような方法で実施したのか。②講和条約調印以後から吉田政権が全面赦免勧告(関係国への全戦犯の釈放要請)を行うまでの政治過程(国会決議を含めた戦犯釈放運動が、本当に政治外交へ影響を与えたのかどうか)。 本年度は上記研究の遂行の為に史資料調査を活発に行った。収集した史資料は主に以下のものである。1国立公文書館所蔵史料。2政治家等の私文書・日記。3巣鴨刑務所内部資料。4当時発刊されていたほぼ全ての新聞。5当時の雑誌。6当時の運動参画団体の刊行物。7靖国偕行文庫所蔵の「井上忠男文書」。8防衛研究所所蔵史料。9外交史料館所蔵史料。10アメリカ合衆国国立公文書館所蔵史料。11イギリス国立国文書館所蔵史料。 これら収集した史資料を分析した結果、以下のことが分かってきた。①署名運動を官の側から支援していた組織が存在していたが分かった。この組織からの地方自治体への要請もあって、1952年の日本では広く署名運動が行われていた。実際の署名は婦人会、青年団、民生委員が収集した。②この署名運動と、署名運動を実施していた諸団体の政府への政治工作が功を奏し、それまで戦犯問題に消極的姿勢であった吉田政権は、関係各国に戦犯の全面赦免の勧告を行った。この勧告は日本政府が戦犯問題を政治的に解決することを内外に示すことを意味した。また、この政治工作には当時再軍備問題に関わっていた旧軍人が関わっていたことも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果によって当初の計画はほぼ終わりつつあり、研究成果も二本の論文にて公表した。 平成28年度の研究は当初の計画からより発展したものとし、戦犯釈放運動に関する研究をより深化させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究内容は以下の二点を主とする。 ①1952年に戦犯釈放運動が行われていた際に、メディアが戦犯問題・釈放運動をどのように伝えていたのかを明らかにする。署名運動が大規模なものとなったことや、それに押されて政府が戦犯問題に対する方針を転換させた背景には、メディアの影響もあったことが予想される。当時の全国紙・県紙、そしてよく読まれていた雑誌・上位20誌において戦犯問題がどのように言われていたのかを分析する。 ②戦犯釈放運動を官の側から支援していた組織と、BC級戦犯が靖国神社に合祀される際に必要であった戦犯の個人情報を靖国側に送った組織が同一の組織であったことがほぼ確実となりつつある。BC級戦犯がなぜ靖国神社に合祀されたのか、その経緯を実証的に明らかにする。
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Research Products
(2 results)