2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内物質輸送に関わるLrrk1の免疫系における機能解析
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15J07574
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森本 桂子 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | オートファジー / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度、LRRK1欠損によるサイトカイン産生能の評価を目標の一つとしていたが、正常型とLRRK1欠損Bone Marrow Derived Macrophage (BMDM)を用いた解析およびsiRNAを用いたLRRK1ノックダウン細胞の解析によって、LRRK1欠損によりTLR4の刺激やE.Coliに対するTNF-α, IL-6, IL-1βといったサイトカインの産生が亢進することが明らかとなった。またin vivoにおいては、LRRK1欠損マウスは、敗血症モデルであるLPS腹腔内投与実験、関節リウマチのモデルであるコラーゲン抗体誘導性関節炎(CAIA)に対して感受性を示すことが明らかになった。これらからLRRK1の炎症性疾患との関連が示唆された。 さらに、LRRK1のノックアウトマウスの新生仔が生後1日から離乳期までに死亡する確率が高いことから、そのメカニズムとしてオートファジーの関与を想定して解析を行った。yeast two-hybrid screening、共焦点顕微鏡、免疫沈降などの手法によってLRRK1がオートファジーを制御する分子的メカニズムを明らかにし、その成果をMol.Cell. Biol. 35, 3044-3058 (2015) に発表した。オートファジーはパーキンソン病、心不全、腎症、炎症性疾患など種々の疾患の発症制御に関わることが知られており、LRRK1がパーキンソン病の原因遺伝子として重要なLRRK2とオートファジーの過程において協調的にRab7の活性化・不活性化のサイクルを制御するという今回の発見はパーキンソン病の病態理解において極めて重要な発見と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LRRK1欠損によってサイトカイン産生が亢進するメカニズムとしてTLR4などの受容体の輸送の異常に起因する事を予想して実験を行った。しかし、FACSによる解析の結果、TLR4の細胞膜表面からの取り込み、リソソームにおける分解速度に関しては障害されていない事が明らかとなった。またtranswellを用いた遊走能の評価においても明らかな差を認めなかった。 一方、LRRK1欠損マウスの新生仔は飢餓に高感受性を示し、電子顕微鏡では肝臓においてグリコーゲン顆粒の蓄積および膨張したリソソームを認めたことからオートファジーの経路の異常を予想し解析を行った。その結果、ER stressを誘導するツニカマイシンによる刺激に対してLRRK1欠損mouse embryonic fibroblast (MEF)は正常型MEFと比較してLC-3Ⅱの蓄積を認め、LRRK1のオートファジーへの関与が示唆された。そこで共焦点顕微鏡を用いて観察を行ったところオートファゴソームとリソソームの融合が障害される事、LRRK1のキナーゼ活性がこの過程に必要である事が明らかとなった。さらにyeast two-hybrid screeningにより膜融合を触媒するSNAREタンパクの一つであるVAMP7がLRRK1と結合する分子として同定され、共沈実験でこれらが実際に結合する事が示された。各種変異体を用いた解析の結果、LRRK1はVAMP7と結合する事でオートリソソームにリクルートされ、TBC1D2のTBCドメインからPHドメインを乖離させる事によってRab7のGAPであるTBC1D2を活性化しRab7のシグナルをoffにすることでオートファジーの流れを制御する事が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
LRRK1欠損BMDMにおいてサイトカイン産生能が亢進するメカニズムに関して、LPSによる刺激を伝達するのに重要なTLR4の細胞膜表面からの取り込み、およびリソソームにおける分解速度に関しては正常型と比べて有意な差を認めなかった。そのため、TLR4下流のMAPKやNF-κBといったシグナル分子の挙動に関してCRISPR-Cas9の仕組みを用いてLRRK1欠損細胞株を樹立し検討を行っていく予定である。 今年度MEFやcell lineを用いてLRRK1のオートファジーにおける役割を明らかにしたが、細胞に侵入した細菌の選択的な除去など免疫の領域でもオートファジーの重要性が明らかになってきており、ヒトにおいてもオートファジー関連遺伝子の変異が炎症性疾患において報告されている事からマクロファージにおけるオートファジーの過程でもLRRK1が重要な機能を果たしているのかに関して検討を行う。 またマクロファージにおけるLRRK1の機能をより詳細に評価するため、申請者がすでに樹立しているLrrk1flox/floxマウスとLysM-Cre transgenicマウスを交配しマクロファージ特異的LRRK1欠損マウスを作成し、改めて各種刺激への応答を評価する予定である。 さらに、今年度のFACSを用いた解析の結果、LRRK1欠損NK細胞において殺菌能、IFNγの産生能が亢進している事も明らかになった事から、来年度はマクロファージのみならず、LRRK1の発現を認めるNK細胞、B細胞など他の免疫系細胞の解析も並行して行う予定である。
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Research Products
(1 results)