2016 Fiscal Year Annual Research Report
分子動力学法を用いた歪IV-IV族混晶半導体のPDP導出に関する研究
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15J07583
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
富田 基裕 早稲田大学, 基幹理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 分子動力学 / IV-IV族混晶 / SiGe / GeSn / SiSn |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究計画はSiCおよびGeSnの2元系混晶のモデルをに対してポテンシャルを作成、分子動力学計算によるフォノン物性の解析を可能とすることである。GeSn混晶についてはSiSn混晶とともにポテンシャル作成が完了し、先行研究の実測で得られているフォノン振動数の組成依存性を再現可能とした。しかし、SiCについてはC単体のポテンシャル作成が難航し、本年度の進捗についてはC単体ポテンシャル作成完了までにとどまった。 GeSnおよびSiSn混晶の結果について述べる。Sn濃度をx = 0.0~1.0まで変化させたGe(1-x)SnxおよびSi(1-x)Snx混晶モデルについてMD計算を行った。サイズは単位格子30×4×4個分で、3次元周期的境界条件を課している。原子間のポテンシャルとして用いたのは、Stillinger-Weber(SW)ポテンシャルである。このポテンシャルは結合長を表す2体項と結合角を表す3体項の和として原子間ポテンシャルをあらわす多体ポテンシャルである。また、SWポテンシャルのパラメータについてMD計算によって求めた格子定数、Γ点のフォノン周波数とMO計算によって求めた変形特性を再現するようにパラメータセットを調整した。MO計算にはHartree-Fock法を、基底関数にはDGDZVPを用いた。結果としてGe-Ge, Si-Siモードのフォノン周波数については先行研究の実験値をほぼ再現できた。しかし、そのほかの振動モードについては実験値が報告されていないため比較はできない。ただし、上記2モードが再現できたことからデータとしての価値は高いと考える。これらの結果よりSWポテンシャルを用いたMD計算によって2元系IV-IV族混晶のフォノン物性についての再現および予測が可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の進捗については、新しくポテンシャルのパラメータセットを作成することにより、予定通りGeSnおよびSiSnのフォノン特性について再現することを可能にした。SiCについてはC単体のSWポテンシャルを用いたフォノン特性再現が困難であることがわかり、今年度内に間に合わなかったが、完全な再現をあきらめて一定の指針を立てることで対応することとした。この成果は国内学会4件、国際学会2件として発表している。また、現在学術論文を1通執筆中であり、来年度上半期中には提出予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度の課題は3元および4元系混晶のパラメータ作成とフォノン特性の再現を実現することである。SiGeSn3元系については既にパラメータ作成が完了しているSiGe、GeSn、SiSnパラメータにSiGeSn3元系の3体パラメータを加えるだけで対応可能であり、既にポテンシャルの調整とMD計算によるフォノン解析に着手しているところである。またCが関わる混晶についてはC単体のポテンシャルについて指針を立てることができたため、急ぎSiC2元系ポテンシャルの開発とフォノンの解析に取り掛かるつもりである。また、実験結果との比較については過去の文献だけでなく、明治大学におけるラマン分光測定や名古屋大学におけるGeSnナノワイヤの熱伝導測定などの課題との連携が話しにあがっており、より実践的なデータとの比較をしていく。
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