2016 Fiscal Year Annual Research Report
多様な架橋過程を可能にするマルチジスルフィド架橋形成
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15J07776
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
高橋 優士 東京農工大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | ペプチド合成 / ジスルフィド結合 / タンパク質修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペプチドおよびタンパク質のジスルフィド架橋形成反応についての研究を行った。いくつかのチオール保護基について電解酸化法が適用可能か検討し、特に溶媒効果について詳細に調べた。その結果、既存のヨウ素を用いた化学酸化法と同様に電解酸化についても溶媒効果が影響することが明らかになった。また、保護基と電解酸化の支持塩の組み合わせによっては電解装置の隔膜の有無によって反応性に大きな違いがあることも明らかになり、こうした知見によって選択的なジスルフィド架橋形成達成に向けて大きく前進した。 また、これまで有機溶媒中でのみ実施してきた電解酸化法によるペプチド分子内ジスルフィド結合形成反応について、水系溶媒中でも実施可能な条件を見出し適用可能な基質の範囲を広げることに成功した。水系溶媒中で実施可能なことを活かし、水溶性の天然由来のタンパク質についても電解酸化法を適用することに成功した。本手法によって酸化されたタンパク質は加熱時の硫化水素発生量やゲル化能などの物性に変化が見られた。そうした物性変化が起こるメカニズムについても考察を行い、穏やかな条件で副反応なく酸化可能な本手法は有用なタンパク質機能改変法となりうることが明らかとなった。 さらに、これまでの研究で得られたタンパク質中のチオール基に関する知見を活かし、疎水性のペプチドと親水性のタンパク質との複合体を作成した。界面活性剤処理によって表面に露出させた場合のみタンパク質中のチオール基と可溶性担体と結合した疎水性のペプチドのチオール基との間にジスルフィド結合が形成された。この反応は緩衝液-クロロホルムの二相系溶媒中で効率よく進行することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ペプチド合成に用いていた有機電解反応によるジスルフィド結合形成反応のタンパク質への応用に成功し、反応の実用性を確認することができた。この過程で、これまでは有機溶媒中でのみ行われていた反応を水溶液中で実施することになり環境負荷の少ない反応系の構築にもつながったと考えている。ペプチドの化学合成におけるジスルフィド架橋形成反応の順序制御に関して、各種チオール保護基の合成・脱保護の検討を行っており、データが集まってきている。しかしながら、保護基ごとの疎水性や立体障害の違いによって実施可能な反応の順序に限界があるように見え、3種類の保護基から6通りの架橋形成順序を達成するという目標達成にはまだ課題が多い。
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Strategy for Future Research Activity |
3種類の保護基から6通りの架橋形成順序を達成するという目標達成に向けて最新の知見を取り入れて実験を実施する。これまでの実験で特定の保護基の疎水性が問題で他の保護基の反応性が著しく低下することが明らかになっており、この保護基を別のものに変えるか化学修飾によって親水性を増すことで問題解決をする予定である。また、いくつかの架橋形成順序を経ることでこれまでに合成されたことのない特異的な立体構造を有するペプチドを合成できる可能性があり、そのペプチド合成も並行して進める。
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Research Products
(4 results)