2015 Fiscal Year Annual Research Report
長寿遺伝子をターゲットとしたアンチエイジング食品の開発とその機能性の分子基盤
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15J07800
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
原田 額郎 九州大学, システム生命科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | sirt1 / b-カテニン / 乳酸菌 / 大腸がん |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、長寿遺伝子SIRT1の発現を増強する乳酸菌T2102株が示す結腸がん細胞の増殖抑制効果について、その分子基盤を明らかにするとともに、多面的解析及びin vivo解析を通じて、T2102株のがん抑制能を評価することを目的として研究を行った。分子基盤としては、T2102株はSIRT1の発現量を増強し、β-カテニンを脱アセチル化するとともに、β-カテニンを消失させ、その結果としてT2102株はDLD-1細胞の増殖を強く抑制することが明らかとなった。さらに、結腸がん細胞においてβ-カテニンにより制御されるヒトテロメラーゼ触媒サブユニット遺伝子hTERTの発現もT2102株が抑制することが明らかとなるとともに、その結果として細胞老化が誘導されることが明らかとなった。また、T2102株のDLD-1細胞に対する造腫瘍能抑制効果に対する効果について多面的解析を行った。まず、T2102株で処理をしたDLD-1細胞を長期培養した後、クリスタルバイオレットにて染色し、接触阻止能について検証した。次に、軟寒天培地上で長期培養時のコロニー形成能を検証した。さらに、ヌードマウスにDLD-1細胞及びT2102株を同時移植した後、接種後の造腫瘍能を検証した。その結果、軟寒天培地を用いた足場非依存性増殖の抑制、コロニー形成能の抑制、及びヌードマウスにおける造腫瘍能の抑制により明らかになった。以上の結果より、T2102株はDLD-1細胞において、SIRT1の活性化を通じたβ-カテニンの抑制とその結果としてのhTERTの抑制及び細胞老化誘導を引き起こすことが明らかになるとともに、がん抑制活性を示すことが明らかとなった。つまりT2102株は、SIRT1活性化を通じた結腸がんの抑制効果を有する食品としても機能しうるものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
T2102株による結腸がん抑制効果について検証を行った。分子基盤としては、SIRT1の下流因子であり、結腸がん細胞の増殖を促すβ-カテニン及びβ-カテニンの下流因子のhTERTを対象として調べ、T2102株が及ぼす増殖抑制と細胞老化との関係性を検証した。T2102株を添加したDLD-1細胞、SIRT1を強制発現したDLD-1細胞、不活性化型SIRT1を導入した後T2102株を添加したDLD-1細胞各々において、β-カテニンの活性をプロモーターアッセイ及びウェスタンブロット法によりした。また、テロメラーゼ及び細胞老化との関与についてT2102処理、SIRT1導入、不活性化型SIRT1導入した後T2102株を添加したDLD-1細胞及びテロメラーゼを強制発現したDLD-細胞、テロメラーゼ発現をノックダウンしたDLD-1細胞を用い、それぞれにおけるテロメラーゼ発現及び細胞老化表現型をプロモーターアッセイ及びSA-β-gal 活性を測定することで検証した。その結果、T2102株はSIRT1を増強し、β-カテニンを脱アセチル化するとともに、β-カテニンを消失させ、その結果としてT2102株はDLD-1細胞の増殖を強く抑制することが明らかとなった。さらに、結腸がん細胞においてβ-カテニンにより制御されるhTERTの発現もT2102株が抑制することが明らかとなるとともに、その結果として細胞老化が誘導されることが明らかとなった。多面的解析としては、まずT2102株で処理をしたDLD-1細胞を長期培養した後、クリスタルバイオレットにて染色し、接触阻止能について検証した。次に、軟寒天培地上で長期培養時のコロニー形成能を検証した。さらに、ヌードマウスにDLD-1細胞及びT2102株を同時移植した後、接種後の造腫瘍能を検証した。その結果、軟寒天培地を用いた足場非依存性増殖の抑制、コロニー形成能の抑制、及びヌードマウスにおける造腫瘍能が低下した。
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Strategy for Future Research Activity |
多面的解析により明らかとなったT2102株による造腫瘍能の抑制効果に対してさらなる検証を行う。再度、nヌードマウスにT2102株処理を施したDLD-1細胞を移植させ、前回と同期間飼育後腫瘍を取り出し、タンパク及びRNAを組織から抽出しβ-カテニン量及びSIRT1量などを定量RT-PCR、ウエスタンブロッティングを用いて解析する。また、β-カテニンの抑制因子であるAPC遺伝子に変異を有し、β-カテニン依存的なポリープ形成から結腸がんを発生するAPCmin/+マウスを用いて、T2102株を繰り返し投与後、大腸ポリープの数・サイズ、腫瘍組織におけるβ-カテニンの発現・活性、テロメラーゼの発現、細胞老化表現型を検証する。
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Research Products
(5 results)