2015 Fiscal Year Annual Research Report
ロジウムカルボキシレートを鍵活性種としたsp3 C-H結合官能基化反応の開発
Project/Area Number |
15J07947
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
益富 光児 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 付加環化反応 / 不斉合成 / 触媒反応 / ビシクロ化合物 / 配位性官能基 / 全合成 / 有機合成化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、既に報告している1,6-エンインの不斉環化異性化反応を1,6-イノンの反応に展開することで2-アルキリデン6-オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン化合物の不斉合成を試みた。しかし、目的の反応は進行しなかった。次に、1,6-エンインにカチオン性ロジウム錯体及び安息香酸触媒を作用させることで2-アルキリデンビシクロ[3.1.0]ヘキサン化合物と3-アルキリデン-1-シクロヘキセン化合物への並行速度論的光学分割を試みた。しかし、アリル位に第3級不斉炭素をもつ1,6-エンインを合成し、カチオン性ロジウム錯体及び安息香酸触媒を作用させたところ目的の3-アルキリデン-1-シクロヘキセン化合物は低収率で得られたものの、2-アルキリデンビシクロ[3.1.0]ヘキサン化合物は全く得られなかった。以上の結果から、本研究計画で想定していたsp3 C-H結合官能基化反応が進行しないことが示唆された。 そこで、sp3 C-H結合官能基化反応ではなく付加環化反応を用いて、含中心不斉環状骨格を合成することとした。2つのアルケンを含んだ分子間[2+2+2]付加環化反応はこれまでに4例報告されているが、いずれも電子不足でキレート配位が可能なαβ不飽和カルボニル化合物を用いていた。そこで私は本反応において、アルケンの電子密度と配位性のどちらか、又はその両方のいずれが鍵となるのかを明らかにすべく、キレート配位が可能な電子豊富アルケンであるエナミドを用いた反応を検討した。 検討の結果、1,6-エンインとエナミドとの反応が室温で進行し、目的のビシクロ化合物が高い立体選択性で得られた。以上のことから、本反応に対するアルケンの電子密度の寄与が小さいことを明らかにした。次いで、本反応を応用してポロサジエノンの不斉全合成を達成した。ポロサジエノンの不斉全合成は本研究が初めてのものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初想定していた、2-アルキリデン6-オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン化合物の不斉合成やアリル位に不斉3級炭素をもつ1,6-エンインを用いた並行速度論的光学分割を行うsp3 C-H結合官能基化反応の開発においては、迅速に基質合成を行い詳細な検討を行うことができた。結果、目的の反応は進行しなかったが、カチオン性ロジウム錯体に対する深い知見を得ることができ、次なる研究テーマの考案に繋がった。 新たに考案した付加環化反応では、電子不足な不飽和結合が高い活性を示すという従来の知見に反し、アルケンの電子状態に関わらず、配位性官能基の有無のみに起因して反応が進行するという、大変重要な知見を得ることができた。また、反応開発を利用した不斉全合成をも達成しており、有機合成上重要な反応を生み出すことができた。 以上の点から、当初予定していたsp3 C-H結合官能基化反応反応開発は達成できなかったものの、新たに考案した分子間不斉付加環化反応に対して充分な研究成果を見出したものと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた、エンインとエナミドとの分子間不斉[2+2+2]付加環化反応に対する研究結果を学術論文にまとめ、投稿する。 また、当初予定していたアリル位に不斉3級炭素をもつ1,6-エンインを用いた並行速度論的光学分割反応に代わって、ホモアリル位に不斉炭素をもつ1,6-エンインを用いて並行速度論的光学分割反応を試みる。しかし、本反応は非常に達成が難しい、新規性の高い反応であり、目的の反応が進行するかどうかは未知数である。 そこで、目的の反応が進行しなかった場合は、1,6-エンインと不斉アリルアルコールを用いた分子間不斉[2+2+2]付加環化反応による並行速度論的光学分割反応の達成に挑戦する。 この反応はアリルアルコールという安価な出発原料を用いて光学活性なアルコールを合成できる有用な反応である。既に私は、アリルアルコールのヒドロキシ基が配向性官能基として作用して、高い立体選択性で6員環化合物を合成できるという知見を得ており、本反応開発は実現性の高い研究計画である。
|