2015 Fiscal Year Annual Research Report
不登校経験者・中途退学者等の受け入れ高校における生徒支援に関する体系的理解
Project/Area Number |
15J07984
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
神崎 真実 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
|
Keywords | 不登校 / 支援 / 大学生ボランティア / 関係性 / フィールドワーク / 媒介 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、不登校経験者や中途退学者等を積極的に受け入れる高校(以下、受け入れ校)をフィールドとして、文脈とともに生徒の学校生活とその支援方法に関する知見を提示することである。平成27年度は、全日制単位制高校Bにおけるフ参与観察データをもとに、1. 生徒が形成する対人関係と2. 大学生ボランティア(以下、Vo)を活用した生徒支援の方法を明らかにした。 1. 不登校を経験した生徒の対人関係は、不登校前から継続して登校に至るまで信頼と不信をめぐって不安定な状態が続き、クラスメイトとの関係不和が欠席へ繋がることが多かった。しかし、出席と欠席、クラスメイトとの接近と距離化とを繰り返すなかで、教職員あるいはインフォーマルな支援者に支えられながら、生徒たちは徐々に適度な距離感をとっていった。そして、友人を通して自己肯定に至る経路が見いだされた。 2. 大学生Voは、単位制B高校において活用されていた。B高校は、生徒が交流・休憩できるホール(以下、生徒ホール)を設け、そこで生徒と雑談をする大学生Voを募集していた。生徒ホールは授業中のみ利用許可制をとっており、それ以外の時間帯はどんな生徒も利用することができた。大学生Voがホールに常駐することで、ホールへ登校する生徒と、クラスで授業を受ける生徒との間の交流が促進・維持されていた。B高校では、「排除しない」関係構築が理念として掲げられ、大学生Voは生徒同士の交流の前提となる登校面、生徒同士の交流を媒介する関係面の双方において活用されることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、通信制A高校と全日制単位制B高校の両方において、参与観察を重ね、知見を構築する予定であった。しかし、複数の事柄(①生徒の学校生活と②サポーターによる支援)に焦点をあてつつ、参与を続けながら、分析を行うことは困難を極めた。そのため、データの分析作業がB高校に集中し、A高校の生徒の学校生活及びその支援に関する知見の構築が予定よりやや遅れてしまった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の検討課題は以下の3つである。 1. サポーターや特色ある活動を活かした支援方法の記述.不登校経験者・中途退学者等の受け入れ校(以下、受け入れ校)では、大学生ボランティアの活用にとどまらず、様々な道具立てを行って生徒の学校従事や友人関係の形成、社会への移行に向けた支援が構成されている(例:専門学科・コースの設置、成果発表の場の創造)。したがって今後は、各高校がどのような道具立てをして支援を構成しているのかを示し、道具となっているサポーターや活動の機能を検討する。 2. 生徒への指導的側面の把握.受け入れ校では単に生徒の学校生活を支えるのみならず、生徒に制約を課すことで教育的指導も行っている。例えば、携帯電話利用や授業中の私語・遅刻の禁止といった校則だけでなく、時には生徒を突き放して自律を促す、生徒が困っていることを把握しつつ本人が相談しに来るのを待つといった指導が行われている。したがって、指導と支援の構成過程を分析することを今後の課題とする。 3. 受け入れ校の有するリソースの分析.受け入れ校では、生徒の学校生活と社会への移行へ向けて様々な人的リソース、教育的・制度的リソースが活用されている。しかし、具体的なリソースの種類や数は明らかにされていない。また、今日では受け入れ校に留まらず多くの高校が新たなコースや特色ある活動を導入している。したがって今後は、各種高校の理念とリソースの用い方について調査をおこなう。
|
Research Products
(9 results)