2016 Fiscal Year Annual Research Report
巨大ナノリングのエピタキシャル重合:太陽電池への応用を目指したナノへテロ接合構築
Project/Area Number |
15J08006
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山岸 洋 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 多孔性材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究員はすでに4つのピリジル基を有するフェロセン配位子FcL と銀イオンを混合することにより、7 nm ほどの巨大な内部空間を有するフェロセンナノチューブ(FcNT)が自己組織化的に形成されることを明らかにしている。また、研究員はそのナノチューブのフェロセン部位を酸化還元することによる超分子構造の構造変化挙動を明らかにしている。本年度は昨年度から引き続きゲスト包接挙動を探索していた。しかしこの従来の錯体高分子では安定性に難があり研究はおおきく停滞してしまう。そこで新規に錯体高分子を設計、合成することとした。合成した有機配位子と金属塩との混合実験を行っていたところ、あるバイアル内で大きな結晶が析出していることを見いだした。ふとした興味からその結晶の構造解析を行ったところ、その結晶は1 nm ほどの孔を多数持つ構造を有していた。驚くべきことにこの多孔性結晶内には金属イオンが含まれておらず、有機配位子のみからなるものであった。この結晶構造を詳細に観察したところ、有機配位子同士を結びつけているのは水素結合よりもさらに弱い分子間相互作用であることが明らかになった。この相互作用はごく近年結晶工学の分野で注目を集めている結合であるものの、この結合を用い多孔性結晶を構築した例はこれまで知られていなかった。すなわち今回偶然から見いだした本多孔性結晶は、これまでに多孔性結晶への応用例のない非常に弱い分子間結合により支えられており、その結合の特異性を利用した物性を期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は従来とりあつかっていた分子設計を見直していく中で、その分子から離れ自らが新規に設計合成した分子を取り扱うことになった。その分子に本来の目的とは異なる様々な可能性を見いだすことができた。非常に弱い結合と多孔性状態という相反する物性を兼ね備えている物質の発見とその探索という意味で、誰も見たことのない新たな化学を開拓するという基礎研究への大きな貢献を果たしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究員は現在、新規に見いだした多孔性結晶の結晶構造解析に加え、耐熱性や、耐酸性、気体分子の取り込み能など付随する各種の物性を測定し、そのさらなる応用展開を図っていく予定である。
|