2016 Fiscal Year Annual Research Report
International Responsibility Invoked by the Private: Legal Status of the Investor in the Investment Treaty Arbitration
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15J08164
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
二杉 健斗 京都大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 投資条約 / 投資仲裁 / 私人の国際法主体性 / 投資仲裁の法的性質 / 投資家 / ISDS条項 / 仲裁 / 紛争処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度の研究を前提として、投資条約仲裁における投資家の法的地位に関わる個別の問題の検討を通じて、本研究の全体的な問題意識に通底する理論的含意を得ることを目指して研究を遂行した。また前年度の研究実績を学会報告の形で批判に問う作業も行った。具体的には次のような成果が得られた。 まず投資家の二次規則(国家責任法)上の権利主体性につき、非金銭的救済に着目して行ってきた研究を、国際法学会研究大会において報告し、国家責任法上の救済規則の運用が投資条約仲裁の制度的性質を反映して一定の修正を受けていることを指摘した。 また前年度理論的な検討に付した条約解釈合意(「有権的解釈」)につき、最近の重要な国家実行を素材として実践的検討を行った。同様に国家間仲裁を通じた解釈統制についても条約・仲裁実行を分析し、「後の合意」(条約法条約31条3項a)としての位置づけを探った。それぞれにつき、研究会での報告を行い、批判・コメントを受けた。 以上の検討から、投資家の法的地位を検討するにあたっては、投資条約を通常の相互主義的な二国間条約と捉えるのではなく、何らかの客観的価値を含んだより多層的な制度として理解する方が適切であるとの仮説を持ちつつある。この点を実証的に明らかにするため、本年度は投資家の「国籍」の概念を機能主義的に理解する議論についての先行研究と仲裁実行を検討した。これらの素材は、投資家がその本国との関係で有する国籍は、投資家自身ないしは投資家本国の主観的利益を保護するための紐帯ではなく、むしろ条約の客観的価値を実現するために機能的に設定された連関に過ぎず、それ故条約ごとに自律的に定義・運用されているとの示唆をもたらす。 以上の成果から、本年度は本研究課題の各論点について一定の具体的検討を行うことができ、また課題全体に通ずる一般的理論的知見に繋がる示唆をも得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の研究から、本研究の課題を明らかにするためには個別の実践的論点を包括的に俯瞰するための理論的視野が求められることが明らかとなっており、本年度はかかる個別論点の具体的検討を重点的に行なった。とりわけ中心的な問題となっている条約解釈については、重要な実行が現れたことも幸いして、充実した検討を行うことができた。また非金銭的救済に関しては、エネルギー憲章条約事務局(ベルギー・ブリュッセル)において起草過程の調査を行うことができ、貴重な発見が得られた。これらのことから、理論的分析の基礎構築が順調に進行していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度においては、具体的な実践から示唆される投資家の法的地位の有り様を明らかにし、それを説明するための理論的な枠組みを構築する作業にとりかかる。中心的な作業は投資条約仲裁の「モデル」に関する様々な学説の検討になると思われ、とりわけ投資条約(仲裁)を何らかの客観的制度として理解する見解(立憲主義、機能主義、グローバル行政法等)が重要な検討対象となると想定され、それらを整理・分析したうえでこれまで検討してきた実践的問題と接合する独自の説明枠組みをまとめることで、研究の総括とすることを目指す。
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Research Products
(4 results)