2015 Fiscal Year Annual Research Report
群発地震・繰り返し地震から明らかにする全世界の地震発生帯の多様性とその原因究明
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15J08193
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西川 友章 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 群発地震 / 繰り返し地震 / プレート境界 / 沈み込み帯 / スロースリップ / ETASモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、主に世界的群発地震カタログの作成に取り組んだ。客観的基準に基づき群発地震(地震発生レートの異常な高まり)を検出するためには、まず、世界中の沈み込み帯においてそれぞれの地域の定常地震発生レート(通常時の地震発生レート)を評価する必要がある。そこで4月から5月、ETASモデルという時空間地震統計モデルを全世界の地震活動記録に適用し、全世界の定常地震発生レートの時空間変動の評価を行った。 6 月から12月には、定常地震発生レートの評価に基づいて群発地震(地震発生レートの異常な高まり)を客観的に検出するアルゴリズムの作成と群発地震の検出に取り組んだ。これまでの群発地震の検出方法は目視による検出が主流であり客観性や再現性に欠けたものであった。そこで本研究では時空間地震統計モデルを応用し客観的な検出法を考案した。具体的には、ある地震系列が時空間地震統計モデルで説明できる確率を計算し、その確率が極めて低いものを群発地震として検出するアリゴリズムを作成した。このアルゴリズムを世界の沈み込み帯の15年分の地震活動記録に適用し、全世界において群発地震の検出を行った。この群発地震検出により世界には群発地震が集中して発生する地域が存在することが明らかになった。さらに、それらの群発地震多発域の多くで、大地震前の前震活動も活発であることも明らかになった。群発地震、前震活動がともにプレート境界のスロースリップに駆動されていることを踏まえると、これらの結果は、上述の地域でスロースリップが多発していることを示唆する。以上の成果は国内外の学会において発表された。 1月から3月には、群発地震カタログの改良や、平成28年度に予定されている繰り返し地震に関する研究のため、地震波形記録から微小地震を検出する手法の習得や手法の高速化に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の大きな目標は群発地震検出アルゴリズムの作成と全世界の群発地震カタログの作成であったが、それらの目標を順調に達成することができた。また、平成28年度以降の研究のために12月以降は微小地震検出法(繰り返し地震検出アルゴリズム、Matched-filter法)を習得する計画であったが、それらの手法も無事習得できた。以上のことから本研究は、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度に習得した微小地震検出法(繰り返し地震検出アルゴリズム、Matched-filter法)を用いて、まず群発地震カタログの改良をおこなう。群発地震活動中の微小地震や繰り返し地震を検出することでプレート境界の非地震性滑り量や非地震性滑り分布を推定する。これらの解析はまず日本周辺沈み込み帯で行い、順次世界の沈み込み帯に拡大していく予定である。以上の解析によって世界の沈み込み帯において非地震性滑り分布やプレートカップリング分布を明らかにすることを目指す。
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