2016 Fiscal Year Annual Research Report
群発地震・繰り返し地震から明らかにする全世界の地震発生帯の多様性とその原因究明
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15J08193
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西川 友章 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 群発地震 / 繰り返し地震 / スロースリップ / プレート境界 / 沈み込み帯 / ETASモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の前半は、平成27年度作成した世界的群発地震カタログの改良に取り組んだ。新たにBath則(Bath, 1965)に従わないという条件を課し、より誤検出の少ない群発地震カタログを作成した。次に改良された世界的群発地震カタログと世界の沈み込み帯のテクトニックな性質の比較を行った。その結果、世界の沈み込み帯の群発地震活動は沈み込むプレートの屈曲と正の相関を示すことを明らかにした。プレートの屈曲は、沈み込み帯の流体分布や固着の不均質性と関係していることが知られている(Ranero et al., 2003など)。このことから、この相関は、流体が豊富でプレート間固着が不均質な沈み込み帯で群発地震が活発であることを示す。これらの成果をJournal of Gephysical Research誌に投稿し、現在査読中である。 平成28年度後半では、日本海溝において繰り返し地震の検出を行い、プレート境界の非地震性滑りの分布、固着域分布の解明に取り組んだ。その結果、1982年、2008年M7茨城県沖地震震源域内で繰り返し地震を含む前震、群発地震が繰り返し発生していたことを明らかにした。また、これらの前震・群発地震活動はETASモデルでは説明できない異常に高い地震発生レートをもつことも確認した。以上の結果は、1982年、2008年M7茨城県沖地震の震源域内でスロースリップが繰り返し発生していることを示唆する。このようなスロースリップがM7茨城県沖地震の発生と関係している可能性がある。これらの研究成果は、日本地震学会秋季大会とアメリカ地球物理学会秋季大会にて発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の大きな目標は、全世界の群発地震カタログの改良と、繰り返し地震を用いた非地震性滑りの検出であった。実際に平成28年度前半には群発地震カタログの改良を完了し、群発地震カタログに関する論文も投稿した。また、日本海溝で繰り返し地震検出を行い、茨城県沖地震震源域内で繰り返す非地震性滑りの検出に成功した。また、アメリカ、スタンフォード大学に3週間程度の短期滞在を行い、微小地震の新しい検出法(FAST法)も習得した。この手法は今後の、繰り返し地震解析にも役立つと期待される。以上のことから、本研究は概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では、まず、M7茨城県沖地震とその震源域内で繰り返す非地震性滑りに関する成果を学術雑誌に投稿する。次に、平成28年度の研究で特に群発地震が活発であった沈み込み帯(バヌアツ海溝、ケルマデック海溝)に対して、繰り返し地震検出を行い、詳細な非地震性滑り分布を明らかにする。この際、平成28年度に習得した高速微小地震検出法(FAST法)なども適宜利用する。最後に、平成27年度から29年度の群発地震・繰り返し地震研究で得られた知見を総合し、世界の沈み込み帯の非地震性滑り分布を決める物理メカニズムをテクトニクスの観点から議論する。
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