2015 Fiscal Year Annual Research Report
変形性膝関節症モデルラットに対する運動負荷がもたらす病理組織学的変化
Project/Area Number |
15J08195
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
飯島 弘貴 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 変形性関節症 / 運動負荷 / 関節軟骨 / 軟骨下骨 / μ-CT |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性膝関節症(Knee osteoarthritis: 膝OA)の病態の中心は関節軟骨の摩耗・変性であるが、近年では病態の認識が改まり、発症早期より生じる軟骨下骨の変化が、関節軟骨の退行性変化を助長している可能性が指摘されるようになった。これまで、病態モデル動物を用いた研究において、歩行運動が関節軟骨の退行性変化を予防しうる、という報告は散見されるが、軟骨下骨の変化に着目したものはなかった。そこで、早期の病態に関与する軟骨下骨変化を歩行運動によって抑制することが、膝OA進行予防に寄与するのではないかと着想した。本年度は、膝OA発症からの時期により、歩行運動が関節軟骨、軟骨下骨に与える影響がどのように異なるのかを明らかにすることを目的として実験を行った。 方法は、12週齢のWistar系雄性ラット(n = 34)に対して、内側脛骨半月靭帯を切離し、膝OAを惹起するDMM(destabilized medial meniscus)モデルを作成した。運動開始時期は2日と28日に分け、時期の違いが関節軟骨、軟骨下骨に与える影響を、組織学的手法およびmicro-computed tomography (micro-CT)を用いた手法により検討した。組織学的所見から、運動を術後28日時点から開始した場合は、術後2日より開始した場合よりも、統計学的有意に関節軟骨および軟骨下骨の変性を抑制することが分かった。さらに、micro-CT所見より、術後28日時点から開始した場合は、術後2日より開始した場合よりも、統計学的有意に軟骨下骨の骨密度を増大させ、軟骨下骨の厚みを増大させることが分かった。以上より、運動による関節軟骨および軟骨下骨の変性予防効果は運動の開始時期により異なること、また膝OAが既に発症した時点(術後28日)から運動を開始しても、膝OAの進行を遅らせることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画通り、運動負荷の開始時期の違いが関節軟骨や軟骨下骨に与える影響の組織学的解析が終了し、その成果をまとめた内容が、年度内に国際誌に受理されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
運動刺激が関節軟骨や軟骨下骨に与える影響に関する実験は、その運動強度をさらに検討することで、学術的・臨床的に有益な知見が得られる可能性が高い。したがって、当初の研究計画通り、昨年度の研究基盤の上に、今年度の研究をさらに推進させる。予定より早く研究結果が得られた場合には、研究をさらに発展させ、運動刺激が関節軟骨や軟骨下骨の変性を遅らせるメカニズムの解析も進めていく。
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Research Products
(8 results)