2015 Fiscal Year Annual Research Report
プロテオーム解析による植物の窒素応答を支える分子ネットワークの解明
Project/Area Number |
15J08368
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前川 修吾 東京大学, 生物生産工学研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 硝酸シグナル応答 / プロテオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
NLP転写因子は硝酸シグナルにより、その分子実態は不明ながら、活性化されることで下流の遺伝子発現制御を行うことが知られている。報告者が所属する研究グループにおける未発表の先行研究により、NLPの活性化には硝酸シグナルの伝達に応答したリン酸化が必要であることが示されていたが、リン酸化の直接の証拠は得られていなかった。そこで、シロイヌナズナに9つ存在するNLPの一つNLP7にMYCエピトープが付加されたNLP7-MYCを発現しているシロイヌナズナ培養細胞の培養液に硝酸イオンを加え、硝酸応答を引き起こした後に、この培養細胞からNLP7由来のペプチドをMYC抗体による免疫沈降を利用して調整し、これのnanoLC-ESI-MS解析を行った。その結果、先行研究によって示されていたものと同一のセリン残基がリン酸化されたペプチドを同定することができた。 また、NLPには硝酸同化経路以外の制御メカニズムにも関与していることが先行研究により示唆されていた。そこで、NLPの制御化にありながらも硝酸同化経路に直接的な関与は知られていない核タンパク質BTファミリーに着目した研究も進めている。先行研究によって、BT遺伝子はNLPによって直接的に発現誘導されることが明らかになっているが、BTタンパク質の機能は不明である。そこで、BTの機能欠損変異体を用いて根の形態形成を詳細に観察したところ、硝酸濃度依存的に側根の伸長が抑制されている結果が得られた。この結果から、硝酸シグナルで活性化されたNLPがBTの発現誘導をすることで形態形成をも制御しているということが考えられる。これは、NLPが硝酸同化経路のみならず、窒素栄養の吸収と関係の深い側根伸長までをも制御していることを示唆する、非常に興味深い結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度中に、NLPのリン酸化を示す直接的な証拠がMS解析により得られた。これは本研究の目的であるNLPによる硝酸シグナル応答機構の解明の鍵となる知見であるため、順調に進展したといえる。 また、BTに関しても側根形成に関与するという興味深い知見が得られたため、今後、本研究の目的を達するための包括的な理解が見込める状況となってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
NLPに関しては、リン酸化の証拠が得られたため、次はそのリン酸化酵素の同定が鍵となる。そこで、プロテオーム解析を中心として相互作用因子の探索を行う。また、BTに関してはその表現型として見出された側根形成に着目してNLPとの関連を解析するとともに、こちらもプロテオーム解析を行うことで新規の相互作用因子の同定を目指し、NLPによるBTを介した側根形成の制御のメカニズムに迫る。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] リボソーム生合成と糖応答2015
Author(s)
前川修吾,石田哲也,柳澤修一
Organizer
第1回植物の栄養研究会
Place of Presentation
東京大学弥生講堂(東京都文京区)
Year and Date
2015-09-04 – 2015-09-05
Invited
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