2015 Fiscal Year Annual Research Report
in vivoトランスオミクス解析による血糖値制御機構の包括的理解
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15J08435
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 有紀 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 糖代謝 / in vivo / 肝臓 / トランスクリプトーム / コレステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
トランスクリプトームデータからの発現量が変動するmRNAを同定した。次世代シークエンサーにより測定した全mRNAのフラグメント配列をマウスゲノム上にマップし、由来の遺伝子を同定した。次に各遺伝子のmRNA数を遺伝子の長さなどをもとに正規化し、発現量を算出した。さらに経口グルコース負荷試験4時間後で発現量が有意に変動しているmRNAを同定した。すべての解析にはRNA-seq解析に頻繁に利用されるTuxedoツールを用いた。 有意変動遺伝子の生物学的特徴を概観するパイプラインを確立した。発現量を算出したトランスクリプトームデータから、肝臓・筋肉においてグルコース負荷後で有意変動を示す遺伝子について、発現遺伝子数に対する割合の算出、発現の絶対量・変動のFold Change・CV値・遺伝子長・GC contentの各種分布の描画、有意変動遺伝子のパスウェイ解析を行うプログラムを作成した。その結果、肝臓ではグルコース負荷後に発現遺伝子の5.3%が変動し、筋肉では2.7%が変動することがわかった。肝臓・筋肉ともに有意変動遺伝子の約7割が増加していた。またパスウェイ解析により、肝臓ではコレステロール合成経路をはじめとする脂質代謝経路に有意変動遺伝子が多く存在することがわかった。コレステロール合成経路における有意変動遺伝子を詳細に調べると、コレステロール合成が促進されていることが示唆された。 ここで立ち上げたトランスクリプトームデータ概観のプログラムは、他のオミクスデータ(メタボローム、プロテオーム等)でも使用できるため、次年度以降では研究の効率化が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は当該年度の目標であった「トランスクリプトームデータからの発現変動を示すmRNAの同定」を予定通り終えた。また発現変動を示す遺伝子に関するさまざまな生物学的特徴を概観するプログラムを実装し、多変量データの可視化を可能にした。その結果、肝臓においてグルコース負荷後に変動する遺伝子は脂質代謝経路に多いことを見出した。申請者が実装した上記プログラムは他のオミクスデータにも転用可能であり、次年度以降では研究の更なる効率化が期待される。年度後半においては、トランスクリプトーム解析により得られた結果をまとめ、国内・国外学会で発表しており、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では、プロテオームデータから有意に変動するタンパク質を同定する。MRMにより測定したプロテオームデータから、経口グルコース負荷試験前後で有意に変動したものを同定する。タンパク量が有意に変動したもので、代謝酵素であるものについてウエスタンブロットにより再現性の確認を行う。 平成29年度では、トランス(複数)オミクスデータをもとに多階層代謝制御ネットワークをボトムアップ式に再構築する。まず濃度が有意に変動した代謝物をメタボロームから同定する。次に濃度が変動した代謝物を基質または産物とする酵素を「責任代謝酵素」と定義し、これを代謝経路図から同定する。責任代謝酵素のタンパク量の変動をプロテオームから同定する。タンパク量が変動した責任代謝酵素の転写量の変化をトランスクリプトームから同定し、さらにその上流転写因子のタンパク量の変動を同定する。各有意変動と上流シグナル伝達経路のつながりに関しては、相関を取ることにより同定する。
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Research Products
(2 results)