2016 Fiscal Year Annual Research Report
Research for God and Man in Islamic Mystical Thought
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15J08533
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澤井 真 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | イスラーム / イブン・アラビー / 存在一性論 / 神名 / カリフ / 完全人間 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度において、海外の研究機関を主な研究活動の場として、イェール大学(アメリカ 4-6月)、ハーバード大学(アメリカ 8-1月)、ウスキュダル大学(トルコ 2月)に滞在した。それらの海外機関での研究成果に基づいて、海外での国際学会をはじめとしながら、英語での研究発表を精力的に行った。さらに、掲載予定を含む3本の論文を通して広く研究成果を世に問うている。 まず、「『タジャッリー』概念とその存在一性論的展開」では、イスラーム思想において展開された存在の流出論に関する議論を、イスラーム教において最も有名な思想家の一人であるイブン・アラビーの前後の議論を思想史的に扱うかたちで考察した。論文中では、イブン・アラビー以前のスーフィーの思想では見られない議論の枠組みが、存在一性論のなかで見られることを指摘した。においては、“Ontological Emanation in Ibn Arabi's School”というかたちで英語発表を行なった。イブン・アラビーの霊的権威論に関して、“Ibn Arabi on the Perfect Man (al-insan al-kamil) as Spiritual Authority: Caliph, Imam, and Saint”として論文を投稿した。イスラーム教における権威の具体的名称としての「カリフ」、「イマーム」、そして「聖者」という諸概念と、イブン・アラビーの完全人間論との関係性について論じている。これらの諸概念は、神の地上における代理者としての霊的権威論であると同時に、イブン・アラビーの完全人間論に収斂されていく議論でもある。 また海外での研究発表を行なうことで、日本の研究レベルを海外に広く発信するとともに、シンポジウム「イスラーム世界を生きる聖者たち」(3月19日 東京大学)を実施するなど国内に還元することに努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外の研究機関(イェール大学、ハーバード大学、ウスキュダル大学)に滞在し、日本では入手が難しい二次文献を借り出しながら研究を遂行することが可能であった。そのため、研究の進捗状況は国内の研究機関に滞在しているときよりも、様々な知見を得ながら研究を進捗させることが可能となった。 また海外での研究発表数を増やしたり、諸学会に参加することによって海外の研究者とのネットワークにも入ることができ、今後の研究を推進するうえで有用なツールを手に入れる事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究機関や滞在先の変更に伴う研究によって、環境になれるまでに少なからず時間を費やした。しかしながら、来年度は日本の研究機関を中心に研究を推進する予定である。それとともに、海外での補足調査(エジプトを予定)や研究発表のために海外へ渡航する予定である。そのため、より中身の濃い研究成果を生み出すことができるように研究を進めていく予定である。 また、前年度までの研究で得た知見を生かしながら、論文や発表を精力的に行う予定である。
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Research Products
(6 results)