2015 Fiscal Year Annual Research Report
多方向エッチングによる3次元フォトニック結晶の開発と光制御への展開
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15J08630
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北野 圭輔 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 3次元フォトニック結晶 / 光ナノ共振器 / 光導波路 / ウエハ融着 |
Outline of Annual Research Achievements |
意のままに,光を伝搬・導波させたり,局在させたりといった,光の自在な制御・操作の実現する基礎概念として光波長程度の屈折率周期を配置したナノ構造体である「フォトニック結晶」が,広く研究されている.適切な設計を行えば,光の伝搬を禁ずるフォトニックバンドギャップが得られ,光に対する絶縁体として機能する.特に周期性を立体的に配置した3次元フォトニック結晶は,あらゆる偏光,波数の光の存在を禁止し,立体的かつ光漏れ損失を極限まで抑制した光制御が可能となると期待されている.これまで2次元構造を順次融着積層していく手法の間に線状あるいは点状の欠陥を入れた層を挟み込むことで導波路や共振器を有する3次元構造を実現した.しかしながら,3次元構造形成のためには,数10 nmレベルの高精度な位置合わせ融着積層などの,複雑かつ時間のかかる工程が周期数と対応する積層数とほぼ同回数要求されるため,実現に成功した積層数は少なく,結果として,導波路や共振器におけるエバネッセント的な光漏れ損失は未だ大きな状況であった. このような背景の元,3次元構造を多層化し,光漏れ損失を抑制するためには構造を簡便に作製することが重要であると考え,昨年度は作製が簡単と期待される手法の開発に取り組んだ.具体的にはこれまで用いられてきた3次元構造の作製手法である層状の構造を順次積層し作製する手法の概念を発展させ,複数層一括融着による3次元構造作製法の開発に取り組んだ.この結果,本作製手法を用いてもこれまで順次積層し作製した3次元構造と同様の構造が作製できることを実証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数層を一括して融着する手法では大面積基板を用意し,複数層分のパターンを形成し,これを高精度に位置を合わせながら融着する必要がある.そこで昨年度はパターンを形成した大面積基板を融着する場合において障害となることが予想される,異種接合に起因したSilicon on Insulator基板の反りの融着に与える影響から検討を開始した.有限要素法を用いた解析によって反りの影響を明らかにし,融着の可能な基板構造を明らかにした.見出した基板構造を用いて,高精度の位置合わせを実行した場合,向かい合わせに配置した融着する2枚の基板が平行からわずかに傾くことに起因して,基板相対位置が接触時700nm以上大きくシフトすることを確認した.このような課題に対し,基板の並行からのずれと,相対位置を観察する光学系との関係をモデル化し位置ずれが発生する要因を特定した.この知見を基に,従来位置合わせに用いられてきた装置を改造し大面積の基板においても相対位置ずれを数十nm程度としながら接触する方法を考案,実現した.実際に,従来の基板から一辺が3倍程度の大面積の基板へ2次元構造を複数配置し,高精度位置合わせ融着装置を用いて,一括ウエハ融着工程を実行したところ2枚の大面積基板を位置ずれ20 nm以下としながら基板全面で接合することを確認した.さらに,得られた基板を,基板表面にパーティクルやと凸部分の形成を回避しながら所望の箇所で分割する手法を見出し,分割行程と分割した基板を融着まで実験的に実行した.以上の検討により,従来の順次融着により作製した構造と同様の構造が,複数層の一括ウエハ融着による手法を用いても作製可能であることを確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究により,複数層を一括融着することによる3次元構造の形成手法を確立した.これまで,作製に時間を要する点が3次元フォトニック結晶の層数を制限し,光制御の効率を律速する要因であった.したがって本手法を適用することにより,これまでよりも簡便に層数を増加させ,多層の3次元構造を形成することが可能となると期待できる.そこで今年度は本手法を用いて,多層の3次元構造を実際に作製する.多層化した構造の中には,これまで報告した点欠陥を基にした共振器や,線欠陥を基礎とする導波路を導入する.これまでの報告では,点欠陥を導入した場合には,光を閉じ込める共振器として動作し,線状の欠陥を導入した場合には光を導波させる導波路として動作することが解析・実験面から明らかになっている.しかしながら,作製したデバイスは層数の有限性により,積層方向への光漏れ損失が大きく,十分な特性を得ることができていなかった.そこで多層の構造を形成し,作製した構造中に種々の欠陥を導入することで光の漏れ損失を抑制したデバイスを実証する.得られた特性と解析とを照らし合わせることでこれらのデバイスを組み合わせた3次元フォトニック結晶特有の立体的な光制御について検討する.さらに,3次元フォトニック結晶特有の性質である,完全フォトニックバンドギャップを基礎とした共振器において光閉じ込め効果を物理的にどこまで高めることが可能かといった検討をする.
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Research Products
(3 results)