2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15J08663
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
志村 恭通 東京大学, 物性研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 四極子秩序 / 重い電子 / 高磁場 / 磁気トルク / 磁気抵抗 |
Outline of Annual Research Achievements |
特別研究員は0.6 K で軌道(四極子)秩序を示す重い電子化合物PrV2Al20 および、強い価数揺動状態にあるYb系重い電子化合物alpha-YbAlB4、そして室温で巨大なホール効果を示す反強磁性体Mn3Sn の高磁場下での研究を進めている。 軌道(四極子)秩序を示す重い電子系PrV2Al20 に関しては米国国立高磁場研究所にて6 月初旬の高磁場下(最大磁場31 Tesla)での磁気抵抗測定、およびその後の日本の所属研究室での低磁場(9 Tesla 以下)での測定により、前年度の結果と合わせて、立方晶の主軸方向である[100]および[110]の相図を完成させた。また、その[100]方向の磁気相図を数値シミュレーションによって再現することに成功した。さらに[100]方向には12 T以上で非常に巨大な磁気抵抗の変化を伴う高磁場相が現れることが知られている。この高磁場相内で、磁気抵抗の異方性が顕著に増大することを見出し、反強四極子秩序が将来的にメモリデバイス等の応用にも役立つことを指摘した。 さらに研究員はalpha-YbAlB4とMn3SnのdHvAを測定するためにHeliox VT (最低温度 250 mK) および 最近導入された高磁場マグネット(最大磁場 16 T)を用いてキャパシタンス法による磁気トルクの測定系を立ち上げた。 磁気トルク測定は磁化の絶対値を得られない反面、非常に高精度であるため、量子振動を見るのに適している。この装置を用いて、Mn3Snに対する予備測定を行い、高磁場研で実験を行うための試料の選定を進めている。研究員は磁気トルクに加えて、磁気抵抗の測定系も立ち上げた。磁気抵抗は同時に三つの試料が測定可能である。そしてalpha-YbAlB4で観測されている量子振動(SdH振動)を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特別研究員は例年米国国立高磁場研究所で高磁場実験を行っているが、そのマシンタイムは貴重で、年に2-3週間が限度である。一方、特別研究員は最近研究室に導入された高磁場マグネットを用いて、低温での測定環境を立ち上げた。これは高磁場研究所の一部の施設と同程度の極限環境である。それゆえ、貴重なマグネットタイムに頼ることなく研究室内で存分に実験ができるようになった。さらに、より高磁場が必要な場合でも、研究室で予備的な実験を行い、十分に試料を選別したのちに高磁場研へ行くことが可能になった。これは次年度の研究に大いに役立つと考えられる。特にMn3Snに関しては、試料依存性が強く、たくさんの試料を測定、評価することは重要である。 さらに特別研究員は立方晶の四極子秩序系PrV2Al20の主軸全方位 30 Teslaまでの磁気抵抗効果の実験データをそろえ、その異方的な相図を完成させた。そして、その結果を十分に解釈し、論文を投稿する直前まで至っている。 以上の理由からおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
Mn3Snに関しては、立ち上げた磁気トルク測定装置を用いて、試料の評価を続けることを考えている。量子振動が見つかれば、その試料を米国国立高磁場研究所での実験で使用する予定である。試料の合成・方位出しに関しては、今まで通り学生と協力して進める。 そして、alpha-YbAlB4に関しては、磁気抵抗で見られている量子振動を磁気トルクでも観測することを計画している。現在、この量子振動がディラック型の線形バンド分散から来ている可能性を考えているが、磁化や磁気トルクからそれが明らかにされれば、その振動解析を行うことによって、ディラック型の線形バンド分散の存在を実験的に確立することが出来ると考えている。 さらに、alpha-YbAlB4の構造異性体に、重い電子超伝導体 beta-YbAlB4 の存在が知られているが、これは0.4 GPaで磁性を伴わない相転移の存在が示唆されている。そこで相転移に伴うフェルミ面の変化を明らかにするため、圧力下での高磁場実験を行う予定である。そのための試料の評価を16 Tマグネットを使って探すことも計画している。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] 反強四極子秩序系 PrV2Al20 の高磁場相と異方的気抵抗効果2017
Author(s)
志村 恭通, Q. Zhang, B. Zeng, R. U. Schoenemann, D. Rhodes, 辻本 真規, 酒井 明人, 松本 洋介, 榊原 俊郎, W. Zheng, Q. Zhou, L. Balicas, 中辻 知
Organizer
日本物理学会第72回年次大会
Place of Presentation
大阪大学(大阪府豊中市待兼山町)
Year and Date
2017-03-17 – 2017-03-21
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