2015 Fiscal Year Annual Research Report
新しい励起準位寿命測定法を用いたインビームガンマ線核分光
Project/Area Number |
15J08882
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
籾山 悟至 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
|
Keywords | 不安定核構造 / 理研RIBF / 米国NSCL |
Outline of Annual Research Achievements |
研究テーマ実現のための前段階として、当該年度は1中性子ノックアウト反応による43S原子核の励起準位構造の解明を目的とした実験を行った。44S周辺では中性子数28の魔法数が破れ、基底状態の核表面が大きく変形している。この変形のメカニズムとして核力ポテンシャルのテンソル力によって1中性子軌道のエネルギーが変化することが議論されている。そこで当該研究員は米国ミシガン州立大学NSCLにおいて44Sから1中性子ノックアウトによって43Sを生成する実験を行った。43Sのそれぞれの準位を生成する断面積の測定によって1中性子の分光学的因子を導出することができ、44Sの中性子配位と変形の関係を議論することができる。43S反応残留核からの脱励起ガンマ線はGe検出器GRETINAを用いて測定した。GRETINAは個々の検出器がセグメント化されており、各セグメントの信号波形から検出器内でガンマ線が相互作用した位置とエネルギーを高分解能で測定することができる。これによってガンマ線エネルギースペクトルの歪みとガンマ線検出位置との相関を導出でき、高分解能での励起準位の寿命測定やより適切なセットアップの設計を行う予定である。 上記の他に、今後の実験でより高分解能での励起準位寿命測定を行うために以下の2つの研究を行った。1つは35Mg原子核の励起準位構造解明の実験データ解析である。この実験ではNaIシンチレータを用いてガンマ線を測定しており、上記44Sの実験との比較によって、検出器の材質の選定を含めたセットアップの設計が可能となる。2つ目は不安定核ビーム中の異なる荷電状態の核種を弁別するための全運動エネルギー検出器の開発である。高いビームレートで十分な質量分解能を得るために光電子増倍管に電圧を印可する装置を自作し、性能の評価を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在もっともエネルギー分解能の良いガンマ線検出器を用いた実験に主体的に参加し、成功裏に完遂することができた。セットアップの大きく違う2種類の実験データを解析しているため、これら2つのデータの比較を通してより良い実験セットアップの構築を効率的に行うことができる。同時に、これまで行ってきた35Mgの結果を投稿論文として執筆中であり、現在までのところおおむね順調に研究が進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
35Mgの実験データの解析結果を投稿論文として出版する。同時に44Sの実験データの解析を行う。次年度以降に投稿論文として出版、国際学会での発表を行うため、理論研究者とのディスカッション等も行う。また高分解能な寿命測定法を確立するため、実験結果をフィードバックしたシミュレーションを中心にセットアップの設計を行う。その他にも不安定核ビームを用いた実験に主体的に参加し、実験の運用や装置の取り扱い等について経験をつむ。
|
Research Products
(11 results)