2015 Fiscal Year Annual Research Report
「すざく」とASTRO-H衛星で解明する弱磁場の中性子星連星:X線放射の統一解釈
Project/Area Number |
15J08913
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野 光 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | スペクトル状態遷移 |
Outline of Annual Research Achievements |
低質量連星系 (LMXB)であるGS 1826-238のX線スペクトルを解析し、ガスが円盤として落ち込み、中性子星の近傍では光学的に薄いガスとして落下し、中性子星からでるX線 (黒体放射)を散乱していることがわかった。他のLMXBでも同様のモデルで説明されるものがあり、LMXBが一般的に記述できる可能性を示した。 さらに、GS 1826-238では、円盤の内縁部分が光学的に薄いガスで覆われており、円盤の放射を散乱していることがわかった。このような現象は、他のいくつかのスペクトル状態が近いLMXBでも見られており、かつこれらはすべ て状態遷移付近であるため、一般的に状態遷移付近では上述の標準的なモデルからわずかにずれる、という可能性があることがわかった。以上の内容を論文にまとめて投稿し、受理された。 光度が変化し、スペクトル状態が遷移しているLMXBを解析し、スペクトルの時間変化がすべて上述の、円盤と中性子星からの放射の散乱の状態 (パラメータ)変化で説明されることがわかった。この 時、パラメータは光度の一価関数で、連続かつなめらかに変化することがわかった。光度が上がるにつれて円盤が中性子近傍まで伸び、それに伴って中性子星への降着が球対称から徐々に赤道面に偏り、黒体放射の散乱が著しく弱くなることがわかった。また、スペクトルの連続成分に加え、相対論的な効果をうけた鉄輝線の兆候が見えたため、現在、精査している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低質量連星系 (LMXB)は、光度が高いときX線スペクトルで軟X線が卓越 (ソフト状態)し、低いときは硬X線が卓越 (ハード状態)する。計画に掲げた、ソフト状態とハード状態の中間にある天体として、GS 1826-238を詳細に解析し、論文に投稿した。また、もう一つ別の天体、Aql X-1がハード状態からソフト状態に遷移している時のデータを解析し、これらがすべて、第0近似として同じ描像で説明されることを示した。GS 1826-238の解析では、大まかな統一的描像に加え、第一近似としてより詳細な理解ができ、予定していたよりも多くの理解が得られた。また、Aql X-1の解析から、光度の一価関数として連続的に状態が変化する様子もわかった。 一方で、LMXBの公転面と視線方向の角度による違いについての研究まで着手できていないため、引き続き次年度に研究する。
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Strategy for Future Research Activity |
低質量連星系、Aql X-1の、状態遷移の間のX線スペクトルの解析をさらにすすめ、状態遷移がどのように起こるのか、物理的描像がどのように変化するかを考察し、論文にまとめ、投稿する。また、スペクトルに、ジェットに起原をもつ可能性のある構造があることを見つけたため、過去に報告された電波観測を含め、これについて考察を行う。 スペクトルの解析から、円盤の内縁半径がわかる。さらに相対論的な効果を受けた円盤由来とおもわれる鉄輝線が見つかったため、円盤の半径などのパラメータと無矛盾に説明できるかの考察をすすめたい。さらに、磁気圧とガス圧の釣り合いから、LMXBにおける中性子星の磁場強度の推定も行う。
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