2016 Fiscal Year Annual Research Report
匂い情報の時間コード化を実現する神経回路メカニズムの解明
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15J08987
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岩田 遼 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 嗅球 / 時間コーディング / オシレーション / 2光子イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
脳の中では周期的な神経活動がしばしば観測されるが、その機能的意義については十分に理解されていない。嗅球における呼吸リズムのオシレーション(嗅球シータ振動)について、リズム発振機構の検証を全呼吸周波数域で行うとともに、覚醒下での振動様式を観察した。さらに匂い情報処理におけるオシレーションの意義を検証した。 1)鼻腔中を通るエアフローが生み出す機械刺激に依存した嗅細胞の興奮により、嗅球シータ振動が発振する。この発振機構の検証を、呼吸周期全域(1-12 Hz)で行った。高速往復動作するシリンジポンプを作製し、マウス鼻腔に1-12 Hzのエアフローをつくり出したところ、エアフローに同期した振動リズムが僧帽細胞で観察された。 2)覚醒下の2光子イメージングを行い、僧帽細胞の振動パターンを観察した。麻酔下では呼吸リズムが2-3 Hzで安定するのに対して、覚醒下では呼吸パターンが逐次変化し、僧帽細胞の活動レベルはダイナミックに変化する。しかし、僧帽細胞の振動パターンは呼吸周波数全域で呼吸リズムに同期し、その振動位相は呼吸周波数によらず一定であった。 3)匂い情報は、僧帽細胞の振動位相が時間的にシフトすることで表現される。この時間コーディングにおける嗅球シータ振動の意義を探った。嗅球シータ振動が存在する条件では、匂いに対する反応タイミングは刺激トライアルごとに変動せず一定であった。ところが、嗅球シータ振動を遮断した条件では、匂いに対する反応のタイミングはトライアルごとに大きく変動した。この結果から、嗅球シータ振動によって時間コーディングの斉一性が保証されることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
呼吸のエアフローに依存した嗅球シータ振動の発振機構を呼吸周波数全域で検証した。また、これまでに麻酔条件下で得た知見について、覚醒下で検証を行った。さらに嗅球シータ振動の機能的意義について解明を進め、時間コーディングの斉一性を保証するという意義を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果を論文発表するとともに、嗅球時間コーディングの回路基盤として側方抑制回路の役割を検証する。また、呼吸リズムのオシレーションは嗅覚システム(嗅球・嗅皮質)に限らず、多様な脳領域に伝播していることが近年明らかになっており、他の感覚入力や運動出力との関連も今後推進すべき課題である。
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Research Products
(5 results)