2016 Fiscal Year Annual Research Report
インド洋における南赤道海流の分岐緯度変動と気候との関係
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15J08994
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山上 遥航 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | アガラス海流 / Natal Pulse / 中規模渦 / 南東マダガスカル海流 |
Outline of Annual Research Achievements |
「1.マダガスカル島沿岸における南東マダガスカル海流(SEMC)とその下流で発生する中規模渦の経年変動の関係」「2.南アフリカ沿岸を流れるアガラス海流の特徴的な変動である蛇行(Natal Pulse)の発生機構と、発生数の経年変動と上流との関係」の二点に関して、衛星観測に基づく海面高度偏差データと高解像度海洋大循環モデル(OFES)の計算結果を用いて、研究を実施した。
1.SEMCの流量の経年変動と、マダガスカル南西沖における渦の発生の経年変動との関係を調べた。はじめに、中規模渦の検出結果を用いて、SEMCとの関係を調べたところ、SEMCが強化しているとき、中規模渦が有意に多く発生していることが明らかになった。また、OFESの結果を用いて、SEMCと渦の発生数について比較したところ、これらの経年変動は比較的よく相関していた。これらは、SEMCの経年変動に伴い、南北流速の東西シアが強化すると、渦運動エネルギーへのエネルギー変換が効率的に行われる可能性を示唆している。
2.アガラス海流の蛇行現象(Natal Pulse)に関して、その発生要因と、発生数の経年変動メカニズムの解明を試みた。Natal Pulseの発生時における中規模渦の役割を調べたところ、ほぼすべてのイベントにおいて高気圧性渦の重要性が明らかになった。これらの渦の発生源を調べたところ、大部分はSEMCの流域であるマダガスカル島南方で生じていた。次に、SEMCの流域とNatal Pulseの発生する領域での渦運動エネルギー(EKE)の経年変動の関係を調べたところ、有意な相関関係が見つかった。また、EKE収支解析から、渦発生時には、平均流運動エネルギーからEKEへのエネルギー供給が重要であることが示唆された。これらの結果は、SEMCの強化がNatal Pulseの発生数に影響する可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初計画していた、「南東マダガスカル海流とその下流で発生する中規模渦の経年変動の関係」と「アガラス海流の特徴的な変動である蛇行(Natal Pulse)の発生機構と、発生数の経年変動と上流との関係」について、概ね明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
アガラス海流の蛇行(Natal Pulse)を引き起こす要因は、マダガスカル島南方から伝播する渦だということが明らかになったが、これらの渦の発生数は、エルニーニョ/南方振動などの気候変動モードと関係する可能性があるため、南西インド洋の中規模渦の活動と気候変動モードとの関係を検証する。 また、中規模渦の発生数には確率的な解釈が必要であるため、Natal Pulseとその発生を引き起こす中規模渦の発生数の不確かさや、Natal Pulseの発生場所のばらつきを、海洋大循環モデルを用いた数値実験により、力学的に検証する。
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Research Products
(5 results)