2015 Fiscal Year Annual Research Report
複合系におけるトポロジカル超伝導体とマヨラナ粒子の理論的研究
Project/Area Number |
15J09045
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
若月 良平 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / スキルミオン / 遷移金属ダイカルコゲナイド / ワイル超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)トポロジカル絶縁体上の磁壁構造に関する研究、(2)空間反転対称性を破った磁性トポロジカル絶縁体におけるスキルミオン生成に関する研究、(3)遷移金属ダイカルコゲナイド (TMD) と通常の超伝導体の積層構造に関する研究の3つを行った。 (1)トポロジカル絶縁体はバルクが絶縁的で表面にのみ伝導状態があるという物質であり、それに磁性原子をドープした系を考察した。表面ワイル電子の媒介により磁気モーメント間にジャロシンスキー・守谷 (DM) 相互作用が生じ、ネール壁が安定化されることを示した。また、ネール壁の向きはディラック点の上下で変わるため、ゲート操作を用いればスピントロニクスへ応用できる可能性がある。 (2)(1)から更に進んで、二次元的トポロジカル構造であるスキルミオンがトポロジカル絶縁体の表面で安定化される可能性について議論した。トポロジカル絶縁体 (Bi,Sb)2Te3 に Cr などの磁性原子をドープした系においては、ホールドープ領域のみでネール型のスキルミオンが安定化される領域が存在することを見出した。実験的にもこの系でのスキルミオン生成が観測されており、その起源を説明したという点でも意義がある。 (3)単層 TMD は面直方向にスピンをロックするスピン軌道相互作用を有する。その影響により NbSe2 のような超伝導 TMD においては、面内方向の臨界磁場が、ゼーマン効果によって超伝導状態が破壊される磁場(パウリ限界)を大きく上回る。これを応用して、通常の s 波超伝導体も常伝導 TMD と接している場合に、近接効果によって臨界磁場が強められることを示した。また、トポロジカル超伝導がラシュバスピン軌道相互作用の強い物質と s 波超伝導体との近接効果によって実現する機構との対比として、この系ではワイル超伝導が実現し、アームチェア端にマヨラナ状態が生じることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、トポロジカル絶縁体の表面状態に起因した DM 相互作用によってスピン構造が非自明な振る舞いをするという効果を見出すことができた。それに加えて、高い臨界磁場やワイル超伝導を実現する系として s 波超伝導体・常伝導 TMD の二層構造という新しい設定を提案することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
バルクにワイル電子を持つというワイル半金属が実験的に発見されてきており、理論的にも注目が集まっている。トポロジカル絶縁体表面上の二次元的なワイル電子と比較して、磁性や超伝導との関係について研究を行うことを考えている。
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Research Products
(5 results)