2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15J09055
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉田 圭介 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | マテリアルフロー分析 / 隠れたフロー / 数値標高モデル / 人為的撹拌 |
Outline of Annual Research Achievements |
「全球データを用いた人為的撹拌に関する研究」は人間活動による人工的な地形改変に着目し,隠れたフロー(資源の採掘等に伴い発生する捨石,表土,ずりといった統計では把握されない資源量)を含む人為的な撹拌量を推計する研究である. 二年目の研究実施状況について,当初計画に従い日本国内の人為的撹拌の抽出・定量化および手法の確立が達成され,国際論文誌への論文掲載(二本)といった形で成果が得られた.また,国外(ドイツ)をケーススタディとした研究を行い,全球で発生する人為的撹拌の把握に向け大きな進捗が見られた.統計に基づき把握されるDE(Domestic Extraction)とGIS(Geographic Information System)により計算された資源採掘量を比較することでHF(Hidden Flows)の算出を行った. 特筆すべき点として,ドイツのケーススタディでは,1)資源採掘および埋め立ての両側面から,これらマテリアルフローを把握するとともに,2)統計とGISにより把握できるHFをより精緻化し,それら値の精度・振れ幅について言及した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人為的撹拌(DE, HF)を定量化する手法が確立され,日本およびドイツにおける空間情報を含む定量化が完了した.ドイツでは土地被覆のデータを活用し,資源採掘量と廃棄物発生量の両方へのアプローチが可能となった.その為,人間活動に伴う物質移動(マテリアルフロー)の「ゆりかご」と「墓場」における物質移動の動態の一部が明らかとなった.資源採掘に伴う隠れたフローの多くは,発生後,即座に埋め戻しとして活用される.そのため,短期間で集中的に計測された衛星データがない限り,その全量の把握が困難であるが,統計データを活用することで推計が可能となる. これまで隠れたフローは,多ければ多いほど環境への負荷が高いと考えられてきたが,実際はその多くが瞬時に埋め戻され,Land Recycling(土地の再利用)として有効活用されることから,一概にそう言いきれない可能性が明らかとなった.また,採掘の跡地に関しても,1)Abandoned land(見捨てられた土地)となる場合と,2)埋め戻しによりLand Recycling(土地の再利用)される場合,3)自然水が溜まり池や湖となり,自然環境との親和性が高くなる場合がある.ドイツと日本を比較すると,2),3)の例が多く見られ,地域による違いが顕著に表れている.(日本の採掘地の多くは山地・森林である一方,ドイツの採掘地は自然保護の観点から平地にも点在する.)
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はリモートセンシングを用いた研究でありながら,人間活動による物質移動量(資源採掘量や廃棄物量)およびその移動に伴う環境への影響(隠れたフロー)の定量化,基盤データの構築に寄与する研究である.今後の研究計画として,その対象範囲をグローバルに拡大することを計画している.これまでの研究より数値標高モデルと土地被覆データ,統計データを活用することで,Domestic Extraction(DE)とHidden Flows(HF)を推計できることが明らかとなっている.また,日本の人為的撹拌の推計モデルを応用し,ドイツにおける人為的撹拌の全貌を明らかとし,そこで得られた知見・新たな手法をもとに,人為的撹拌のさらなる解明に挑戦する.そこでは,物理的な地形変化および土地利用の変化の空間的定量化より,HFやUnused Materialとして知られる”捨石,表土,ずり”といった非取引財が,1)どのような動態で自然環境圏と人間社会圏を行き来するか,2)それらの撹拌が,どのような影響を与えているか,をグローバルに検討する. また,国際学会での発表を通し,最先端で活躍する世界の研究者より建設的な意見を得られることで,今後の論文投稿および研究内容に大きな進捗が期待される.
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Research Products
(9 results)