2015 Fiscal Year Annual Research Report
レドックス型イオン結晶によるポストシンセシス法を用いた機能スイッチング
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15J09109
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川原 良介 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 多孔性化合物 / 酸化還元反応 / ポストシンセシス法 / ポリ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度はMo系ポリ酸を用いた多孔性イオン結晶を合成し、その酸化還元特性を利用することでの多孔体の機能スイッチングを試みた。また本成果はアメリカ化学会誌のChemistry of Materialsに掲載されている。本研究では当初の計画通り、多孔体の構築を行った後に、酸化還元を伴うイオン導入を行うことによって多孔体の機能変化、及びイオンふるいへの応用に成功した。機能変化ではカリウムイオンを主としたイオンの脱挿入を可逆的に行い、多孔体の結晶構造を崩すことなく5回のRedoxサイクルを行うことができた。アルカリ金属イオンはナトリウムイオン,カリウムイオン,ルビジウムイオン,セシウムイオンなどを導入し、それに伴う多孔体の水吸着量は金属イオンのイオン半径に応じて変化することが分かった。さらに、これらアルカリ金属イオンの導入速度が異なる事が分かり、その速度論的解析を経時変化をとる事によって考察した。経時変化は金属イオンの導入を原子吸光光度計より、ポリ酸の還元に伴うIVCT (原子価間電荷移動)をUV-visスペクトルより定量化することで行った。多孔体への金属イオン導入は水溶液中に存在する水和されたアルカリ金属イオンが脱水和されてから細孔内部に取り込まれると考えられ、セシウムイオンなどイオン半径が大きいイオンは水和エネルギーがカリウムイオンなどに比べて低いためこの脱水和は容易に起こると考えられる。このような性質を利用し、ナトリウムイオンとセシウムイオンを混在させた水溶液中に本化合物を加えて同様の実験操作を行うとセシウムイオンのみをほぼ100%で導入することにも成功している。このようなイオンふるいとしての機能は海水中に大量存在するナトリウムイオンやカリウムイオンなどから放射性セシウム(福島第一原発事故による汚染水)を識別するための有用な学術的報告である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述した通り、申請者はレドックス型イオン結晶の合成・機能制御に成功している。現在はさらなる機能制御に向けて、ホスト骨格にクラウン型有機配位子を取り込んだ多孔性イオン結晶の合成に取り組んでいる。現段階では、特にこの新規多孔性イオン結晶の結晶化・Redox応答性について模索している。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目の研究推進方策では、クラウン型化合物を用いることで研究をさらなる向上させることを前項に述べた。これまでにも大環状有機配位子やジベンゾクラウン誘導体などを用いて多孔性イオン結晶の構築を試みているが、それらは未だ成功していない。そこで、ドーソン型ポリ酸をユニットとしたクラウン系ポリ酸を用いることによって、これらの研究遂行を図る。
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Research Products
(8 results)