2015 Fiscal Year Annual Research Report
勾配流を用いた結び目のエネルギー最小元の存在と非存在に関する研究
Project/Area Number |
15J09156
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
石関 彩 埼玉大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | 結び目のエネルギー / メビウス・エネルギー / 勾配流 / メビウス変換 / エネルギーの分解 / 変分公式 |
Outline of Annual Research Achievements |
結び目のエネルギーの一種であるメビウス・エネルギーは、メビウス変換に関して不変であるという幾何学的な性質をもつエネルギーであるため、その構造を調べるには繊細な解析的な扱いが必要となる。本研究課題の目的のひとつは、「このエネルギーに関する最小元が存在するか否か」という解析学的に素朴な疑問に何らかの答えを与えることであるが、本年度は、そのために必要な基礎となる結果を与えた。 一般に、あるエネルギーの最小元の存在・非存在を求める方法はいくつかあるが、本研究においては、メビウス・エネルギーが結び目の連続的な変形に応じて値が連続的に変化することから、勾配流を用いたアプローチが適切であると考える。そのため、変分公式に対する様々な関数空間における評価を得ることは、勾配流方程式を扱うにあたって重要である。 平成27年度は、変分公式の定義域の拡張について考察した。形式的な部分積分によって、曲線がより高い次数のソボレフ空間に属すれば、試験関数の正則性を下げた空間に変分公式の定義域を形式的には拡張できる。形式的と書いたのは、部分積分によって生じる対角部分の値の処理が必要になるからである。これを論文にまとめ投稿した。 これらの結果は、日本数学会における口頭発表を始め、北海道大学偏微分方程式セミナーや、神戸大学解析セミナーにおける講演、また、イタリアとスイスの国際研究集会において、それぞれポスター発表を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題のもととなった論文が解析学の権威ある学術雑誌 Mathematische Annalen から出版されている。平成27年度はそれに引き続く研究を行い、その結果が結び目理論の学術雑誌 Journal of Knot Theory and Its Ramifications から出版に至っている。また、本研究課題の遂行に当たり有力な助言者であるSimon Blatt氏(Salzburg大学)およびArmin Schikorra氏(当時Basel大学)を訪問し、研究集会への参加および研究連絡を行った。 また、複数のセミナーおよび研究集会において講演の依頼を受けるなど、他の研究者からも興味を持たれている。 以上の理由から、当該研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
メビウス・エネルギーに対する勾配流は、Simon Blatt による先駆的な結果がある。局所解の一意存在と極小点近傍の大域的存在である。本研究では、初期曲線が合成結び目の場合は、有限時刻爆発を起こすと予想している。爆発は、結び目がプルタイトを起こす事で引き起こされ、その結果、エネルギーの集中が生じると思われる。エネルギーの集中が第一と第二エネルギーの双方に起こるのか、片方のみに起こるかを解析したい。換言すれば、分解エネルギーの集中が起きない限り勾配流が延長可能かどうかを各分解エネルギーについて解析する。 また、平成28年度は、結び目のエネルギーの勾配流方程式の研究Simon Blatt 氏を訪問し、先進的な当該研究課題の遂行に努める予定である。
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Research Products
(4 results)