2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15J09301
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
永岡 崇 佛教大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2018-03-31
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Keywords | 民衆宗教 / 総力戦 / 占領 / 知識人 / 朝鮮半島 |
Outline of Annual Research Achievements |
採用第1年度目は、1940年代の日本における民衆宗教についての基礎的な調査として、次の調査を行った。 ①国会図書館がマイクロフィッシュの形態で収集を行っている、GHQの民間情報教育局(CIE)資料を閲覧し、占領期におけるさまざまな宗教集団の活動、またGHQにあてられた宗教指導者や信者らの書簡などをもとに、当時の民衆宗教がどのように分布し、どのような実践を行っていたかを目録としてまとめる作業を行っている。 ②大宅壮一、戸坂潤、思想の科学研究会、H・N・マックファーランドらによる「新興宗教」批評の言説を検討した。そこでは、それらの「新興宗教」を「インチキ」として否定する立場、戦後の混乱状況を反映した社会現象としてみる立場がある一方で、大衆による異議申し立ての形態として評価しようとする立場もある。しかし、単純に「たてまえとしてのモラルや価値体系」への「社会的反応」と位置づけるだけではあまりに受動的なとらえ方であり、「新興宗教」が主体的に提示する世界観に向き合うべきではないか、とする問題提起を行った。 ③名古屋市昭和区の日蓮宗法音寺において、前身である大乗報恩会時代の機関誌『出世の栞』などを閲覧し、戦時下に宗教的な救済活動を行うことができなくなるなかで、社会福祉事業を展開していく過程について検討を行っている。 ④近代日本を代表する新宗教である天理教が、1940年代に炭坑や農村、工場などで勤労奉仕を行う「ひのきしん隊」と呼ばれる時局活動を展開するなかで、民衆宗教としての性格が変容していく過程を、機関誌『みちのとも』などの分析を通じて跡づけた。さらに、戦時期におけるこうした既存の救済宗教の変容が、新たな民衆宗教の生成を準備する要因のひとつになっていることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、総力戦期および占領期における日本(「内地」)の民衆宗教の展開について、基礎的情報を蓄積することができた。また、当該時期の民衆宗教を歴史的に評価するための視座も、先行研究の批判的検討を進めるなかで定まってきたと考える。研究課題に照らして、おおむね順調に進展しているといえるが、次年度の課題として、本研究のもうひとつの柱である、朝鮮半島における民衆宗教の展開についての調査を進めていくことが求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も、まず国会図書館に所蔵されているGHQの調査資料および新聞資料を中心として、とくに占領期の「新興宗教」の活動状況を目録化する作業を継続して行っていく。 また、朝鮮半島における民衆宗教の展開についての史料収集のため、韓国や米軍政府関連の行政資料収集を行い、その分析を進めていく。日本国内(「内地」)の事例との比較を通じて、帝国の崩壊過程と民衆宗教の関わりについて包括的に理解することが課題となる。 さらに、大乗報恩会や世界救世教を事例として、総力戦期から戦時下にかけての民衆宗教が宗教運動/社会事業をどのように展開させてきたのかを掘り下げて検討していく。
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Research Products
(8 results)