2015 Fiscal Year Annual Research Report
災害下におけるソーシャルキャピタル・メンタルヘルスの行動経済学的研究
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15J09313
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩崎 敬子 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2015-04-24 – 2017-03-31
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Keywords | ソーシャルキャピタル / メンタルヘルス / ロスアバージョン / 東日本大震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災によって全国で避難生活を続けている福島県双葉町の住民の方を対象に行った独自のアンケート調査の分析を進め、災害下のソーシャルキャピタルとメンタルヘルスの関係の検証と、ロスアバージョンの理論の実証分析という二つの側面からそれぞれ論文にまとめた。 まず、双葉町民の方のメンタルヘルスの状態が他の被災地と比較しても深刻な状況にある可能性があること、メンタルヘルスを良好な状態に保つにはソーシャルキャピタルが重要な役割を果たす可能性があるという分析結果を論文にまとめて、日本経済学会(2015年5月)、International Health Economics Association World Congress(2015年7月)と、Annual Conference of Japan Association for Human Security Studies (2015年12月)で口頭発表を行った。 そして、災害前後の収入、身体的な健康状態の変化と、災害後の精神的な健康状態の間にロスアバージョンの関係がある可能性があるという分析結果を論文にまとめて、行動経済学会 (2015年11月)と Annual Conference of Japan Association for Human Security Studies (2015年12月)で口頭発表を行った。 現在は、これらの学会で頂いたフィードバックをもとに、両論文ともさらに分析を行い、ジャーナルへ投稿するため、論文の最終的な修正を行っている。 また、調査・分析結果は双葉町長含む双葉町役場の皆様に直接お会いしてご報告する機会を頂き、双葉町の現状や今後の調査について様々なご意見を頂く機会となった。双葉町民の皆様にも書面にて町役場を通じて郵送で調査結果、分析結果をご報告させて頂いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
福島県双葉町の住民の方を対象に行った独自のアンケート調査の分析を行い、二本の論文にまとめ、国際学会での三件の口頭発表を含む、五件の口頭発表を国内外の学会で行った。そうした機会に頂いたフィードバックをもとにさらに分析を進めることで改正を加えていった論文を査読付学術雑誌に投稿する段階まで研究を進めることができ、当初の計画以上の研究の進展があった。 また、アンケート調査にご協力頂いた双葉町役場と、双葉町民の皆様に調査、分析結果の報告を行った。町の現状や現在の課題などを伺う機会にもなり、今後の研究の進展につながる機会になった。
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Strategy for Future Research Activity |
災害後の長期的はソーシャルキャピタルとメンタルヘルスの変化を捉え、その関係について研究を深めるため、双葉町の住民の方を対象としたアンケート調査を継続して実施する。 また、宮城県で継続的に行われている被災者の健康調査のデータを用いて、ソーシャルキャピタルとメンタルヘルスの関係について分析を行う準備も進めている。 加えて、双葉町役場訪問の際に、現在の双葉町の最も重要な課題の一つが、双葉町民の方と避難先の現地の自治体との関係であるという話を伺った。今後実施する調査では、これまでのソーシャルキャピタルの指標に加えて、避難先の自治体や住民の方との関係についての質問項目を含め、この課題についても、政策的な示唆を与えることができるよう分析していきたい。
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Research Products
(5 results)